古代日本において、宝石は単なる装飾品ではありませんでした。それは魂(タマ)を鎮め、強大な霊力を宿す、いわばマジックアイテムだったのです。その最強のアイテムである三種の神器の一つ「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」を作り出したのが、**玉祖命(タマノオヤ)**です。彼は石凝姥命(鏡の神)と共に天岩戸神話で活躍し、その後もニニギノミコトに従って地上へ降り立った「五伴緒(いつとものお)」の一柱として、日本の建国神話に深く関わっています。
天岩戸と勾玉の製作
魂を繋ぎ止める輝き
天照大御神が岩戸に隠れた際、神々は彼女の気を引くために様々な儀式を行いました。タマノオヤは、八尺(非常に長いことの比喩)もある緒(ひも)に通した五百津(たくさんの)勾玉を作り、榊(さかき)の木に奉り飾りました。勾玉の形は、胎児や牙、あるいは魂そのものの形を象徴していると言われ、その美しさと霊力で、暗闇に閉ざされた太陽神の心を和ませ、再び地上に戻す重要な役割を果たしたのです。
玉作部の祖
彼は、古代の宝石加工技術者集団である「玉作部(たまつくりべ)」の祖神とされています。出雲地方(島根県)には「玉造温泉」など玉作りに由来する地名や遺跡が多く残っており、彼の影響力の大きさがうかがえます。
眼鏡とカメラの神様?
意外なご利益
山口県防府市の玉祖神社(たまのおやじんじゃ)をはじめ、全国で祀られています。面白いのは、彼が「レンズ(磨かれた石)」に通じることから、現代では眼鏡・時計・カメラ業界の守護神としても信仰されていることです。光を操り、像を結ぶレンズのルーツは、彼が磨き上げた太古の勾玉にあるのかもしれません。
まとめ
石の塊から美しい宝石を磨き出すように、玉祖命は人々の魂を輝かせる技を持った神です。私たちが身につけるアクセサリーや、世界を切り取るレンズの中に、彼の技術と魂は今も息づいています。