「ヴィジャヤ(Vijaya)」とは、サンスクリット語で「勝利」を意味します。その名の通り、この弓を持つ者には勝利が約束されるという、インド神話『マハーバーラタ』における最強の弓の一つです。悲劇の英雄カルナの最後の切り札として知られています。
勝利を約束する神の弓
破壊神シヴァの力
元々は工匠神ヴィシュヴァカルマンが作り、破壊神シヴァが所有していた弓です。その後、インドラ神の手を経て、あばれん坊の化身パラシュラーマに渡り、最終的に彼の弟子であるカルナへと託されました。神々の手を渡り歩いた、正真正銘の神造兵装です。
絶望の弦音
この弓の弦が鳴り響く時、その轟音だけで敵兵は恐怖し、意識を失ったと伝えられています。矢を放つ以前に、その存在感だけで戦場を制圧する力を持っていました。また、呪文を唱えることで強力なアストラ(神の武器)を射出する増幅器としても機能しました。
カルナの悲劇とヴィジャヤ
呪いによる不発
カルナは宿敵アルジュナとの最終決戦でこの弓を用いました。本来なら負けるはずのない戦いでしたが、彼は過去に受けた「絶体絶命の時に戦車の車輪が沈み、知識を忘れる」という呪いにより、ヴィジャヤの真価を発揮することができませんでした。最強の武器を持ちながら敗北するという、最もドラマチックな最期を遂げたのです。
アルジュナのガーンディーヴァ
ライバルであるアルジュナの使用する神弓ガーンディーヴァと双璧をなす存在です。炎の神アグニのガーンディーヴァに対し、シヴァのヴィジャヤ。まさに頂上決戦にふさわしい対決でした。
現代作品でのヴィジャヤ
Fateシリーズでの知名度
『Fate/Grand Order』等の影響で、カルナの武器としての知名度が爆発的に上がりました。ただしゲーム内では槍(「日輪よ、死に随え」)のイメージが強く、弓としてのヴィジャヤはアーチャー・カルナの装備として登場することがあります。
必殺の遠距離武器
他のゲームでも、必中効果や高クリティカル率を持つ最上位の弓として設定されることが多く、「勝利」という名に恥じない性能を与えられています。
【考察】なぜ「勝利」でも負けたのか
運命には勝てない
ヴィジャヤは「勝利」を意味しますが、インド神話の根底にあるのは「ダルマ(法・義務)」と運命の力です。いかに強力な神の武器があっても、定められた運命や自身のカルマ(業)を覆すことはできない。ヴィジャヤの敗北は、武力よりも運命の方が重いというインド哲学の教えを示唆しています。
まとめ
弦音を響かせることなく沈黙した勝利の弓。しかし、その潜在能力と、それを振るった英雄の高潔な生き様は、敗北を知らない永遠の輝きを放っています。