世界最長の叙事詩『マハーバーラタ』の実質的な主人公、アルジュナ。雷神インドラの息子として生まれ、神々から愛され、数多の武具(アストラ)を授かった彼は、まさに「完璧な英雄」の体現者です。しかし、その内面には、親族と戦わねばならないことへの苦悩や、宿敵カルナへの複雑な感情という人間的な弱さも抱えていました。神弓ガーンディーヴァの使い手である彼の、栄光と苦悩の物語に迫ります。
全てを与えられた王子
弓の名手
パンダヴァ五兄弟の三男として生まれたアルジュナは、武術の師ドローナから最も愛された弟子でした。数々の試練を乗り越え、炎神アグニからは最強の弓「ガーンディーヴァ」を授かります。彼は文武両道、容姿端麗で、多くの女性から求愛されるなど、英雄としての資質をすべて備えていました。
バガヴァッド・ギーター
クルクシェートラの大戦争直前、親戚や師匠と戦うことに戦慄し、戦意を喪失してしまったアルジュナ。そんな彼を導いたのが、御者として彼を支えていた最高神の化身クリシュナでした。クリシュナは「義務(ダルマ)を遂行せよ」と説き、世界の真理を彼に示します。この対話は『バガヴァッド・ギーター(神の歌)』として、ヒンドゥー教の最も重要な聖典となっています。
宿敵カルナとの因縁
光と影
「施しの英雄」カルナとは、異父兄弟でありながら宿命的なライバル関係にありました。全てを持っていたアルジュナと、何も持たざるを得なかったカルナ。二人の対決は叙事詩のハイライトです。最終的にアルジュナはカルナを討ち取りますが、それが卑怯な手段(呪いで動けない相手を撃つ)であったこと、そして殺した後に彼が兄であったことを知ったことは、アルジュナの心に深い傷を残しました。
完璧な英雄の「黒」
アルジュナという名前は「白/銀」を意味しますが、彼の別名クリシュナには「黒」という意味もあります。彼の中にある、完璧であるがゆえに抱える闇、あるいは独善的な側面は、神話においても重要なテーマとして描かれています。
Fateとアルジュナ
授かりの英雄
FGOでは、多くのギフトを持つ「授かりの英雄」として描かれます。カルナへの執着心(キルナ……!)が強調され、普段の冷静沈着な振る舞いとのギャップがキャラクターの深みを生んでいます。また、インド異聞帯においては全ての神性を統合した「神たるアルジュナ」という超越的な存在としても登場し、その強さの底知れなさを見せつけました。
まとめ
アルジュナは、神に愛され、義務を果たした英雄ですが、その勝利の裏には常に犠牲と苦悩がありました。彼の物語は、正義を行うことの難しさと重さを我々に教えてくれます。