アパトサウルス(Apatosaurus)は、ジュラ紀後期の北米大陸に君臨していた、竜脚類(カミナリ竜)を代表する巨大恐竜です。「欺くトカゲ」という不思議な学名を持ちますが、これは発見当時、尻尾の骨がモササウルス類に似ていて研究者を混乱させたことに由来します。かつては「ブロントサウルス」として世界中で愛されていましたが、学名の優先権というルールにより長くその名が消えていました。しかし、彼らの巨体が大地を揺らす音は、今なお私たちの想像の中で響き渡っています。
消えた雷竜の伝説
1877年、オスニエル・マーシュは新種の恐竜として「アパトサウルス」を発表しました。その直後の1879年、より保存状態の良い化石を見つけ、「ブロントサウルス(雷竜)」と名付けました。このブロントサウルスの骨格は非常に立派で、博物館の目玉として世界的に有名になりました。しかし、後の研究でこの2つは「同じ種類の恐竜(成長段階が違うだけ)」であることが判明しました。科学の世界では「先に付けられた名前が正しい」という絶対的なルールがあるため、有名なブロントサウルスの名は無効となり、アパトサウルスに統一されました。この変更は多くのファンを悲しませましたが、2015年の詳細な再研究で「やっぱり骨格の特徴が違うから別種でいいかもしれない」という説も浮上しており、名前を巡るドラマは100年以上経った今も続いています。
音速のウィップテール
全長23メートル、体重20トンを超える巨体もさることながら、最大の特徴は極端に細長く伸びた「鞭のような尾」です。この尾は80個以上の骨からなり、先端部分は非常に細くなっていました。コンピュータシミュレーションによると、この尾をムチのように強く振ることで、先端の速度は音速を超え、「バチーン!」という凄まじい衝撃音(ソニックブーム)を発生させることができたとされています。この音は、肉食恐竜アロサウルスへの威嚇や、数キロ離れた仲間とのコミュニケーションに使われていたと考えられ、彼らは「音」を武器にする恐竜だったのです。
巨大な芝刈り機
同じ時代に生きたブラキオサウルスが高い木の葉を食べていたのに対し、アパトサウルスは首を地面と水平に保ち、低い場所のシダ植物やソテツを大量に食べていました。彼らの歯は鉛筆のような形をしており、植物を噛み砕くのではなく、熊手のように枝から葉を梳き取って丸呑みにしていました。消化は巨大な体内の発酵タンクで行われ、その食欲は平原の植生を一変させるほど凄まじいものでした。
まとめ
アパトサウルスは、名前の混乱や変更を乗り越えて、なお輝き続けるジュラ紀のアイコンです。その堂々たる姿は、太古の自然の雄大さと、古生物学の奥深さを同時に教えてくれます。