ヴァジュラ(漢訳:金剛杵)は、元々はインド神話の雷神インドラが、世界を干上がらせる悪竜を倒すために振るった最強の武器でした。時代と共にその意味は変化し、後に仏教に取り入れられてからは「煩悩を打ち砕く悟りの智慧」の象徴となりました。「ダイヤモンド(金剛)」のような不滅の硬さと、「雷」のような圧倒的な破壊力の2つの意味を併せ持つ言葉です。
聖仙の骨から作られた雷
ヴリトラ討伐の切り札
かつて世界を干ばつに追い込む巨大な悪竜ヴリトラが現れ、神々の武器すら通用しませんでした。創造神ブラフマーの助言により、インドラ神は強力な武器を求めました。高潔な聖仙ダディーチは、世界を救うために自らの命を捧げ、その強靭な「背骨」を材料として差し出しました。神工トゥバシュトリがその骨を加工して作り上げたのが、このヴァジュラです。
無敵の硬度と破壊力
ヴァジュラはあらゆる物質の中で最も硬く、決して壊れることがありません。インドラがこれを投擲すれば、激しい雷撃となって敵を焼き尽くし、必ず手元に戻ってきます(ここでも神々の武器お決まりのブーメラン機能が登場します)。これはゼウスのケラウノスやトールのミョルニルと起源を同じくする、「天空神の雷撃兵器」のインド版と言えるでしょう。
武器から法具へ
密教におけるシンボル
仏教(特に密教)がインドから中国、日本へと伝わる過程で、この強力な破壊力が「煩悩(迷い)や魔を砕く力」へと転化されました。弘法大師空海が肖像画で手に持っているのも、この一種である五鈷杵(ごこしょ)です。爪の数によって独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵などの種類があり、それぞれ異なる宗教的意味を持っています。
アニメ・ゲームでの描写
現代のゲーム作品では、短い金属製の鈍器として直接殴ったり、魔法の杖として雷を放ったり、あるいは召喚獣の必殺技名になっていたりと多彩な描かれ方をします。共通しているのは「硬い」「雷」「神聖」という属性であり、神話と宗教の両面から「最強」のイメージを確立しているアイテムです。
まとめ
物理的な最強の「硬さ」と、精神的な最強の「智慧」。その両方を兼ね備えたヴァジュラは、アジア全域の精神文化に深く根付いた、究極のパワーアイテムなのです。