夜空を見上げた時、そこに広がっている星々は女神ヌトの体そのものです。エジプト神話では、空は巨大な女性であり、彼女は手足を四方の大地に置き、巨大なアーチとなって夫である大地神ゲブを覆っています。彼女の体には無数の星が輝き、あるいは天の川が流れています。彼女は死者を保護する女神でもあります。
引き裂かれた夫婦
天と地の分離
元々、空(ヌト)と地(ゲブ)は密着して愛し合っていました。しかしそれでは万物が生まれる隙間がなく、太陽神ラーも運行できません。そのため、父である大気の神シューが二人の間に入り、無理やり引き離しました。こうして、天は高く持ち上げられ、地との間に空間ができ、私たちが住む世界が成立しました。彼らは今でも離れ離れですが、手足だけは辛うじて大地(ゲブ)に触れています。
太陽の母
生と死のサイクル
ヌトは夕方になると太陽神ラーを口から飲み込み(日没)、朝になると産道から再び産み落とします(日の出)。このサイクルは、死後の再生の象徴と考えられました。死者は彼女に飲み込まれることによって星となり、あるいは太陽のように再生すると信じられていました。そのため、棺の内側(蓋の裏側)にはよくヌトの姿が描かれ、死者を抱きしめて守っています。
厄日生まれの子供たち
ラーはヌトが彼以外の子供を産むことを恐れ、「どの日にも子供を産んではならない」と命じました。困った彼女はトト神に相談し、トトが月との賭けで勝ち取った「どの日にも属さない5日間」を使って、オシリス、イシス、セト、ネフティスといった主要な神々を産みました。
ジョジョでのヌト
ヌト神の暗示
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部に登場するオインゴ・ボインゴ兄弟の弟ボインゴが持つスタンド「トト神」の予言の書において、ヌト神の名前が登場するエピソードなどがあります。直接スタンドとしては登場しませんが、エジプト神話において非常に重要な神であることを示しています。
まとめ
朝が来て夜が来る。その当たり前の天体の運行は、女神ヌトの呼吸そのものなのです。広大な宇宙を母性として捉えたエジプトの人々の想像力は、今なお私たちを魅了します。