私たちが今この瞬間も呼吸している空気、それが神シューです。彼は天(ヌト)と地(ゲブ)の間に立ち、その強靭な腕で空を支え続け、世界に「空間」を作り出しています。彼がいなければ、世界は圧死してしまうでしょう。
シューとはどのような神か?
シューはヘリオポリス九柱神の一柱で、創造神アトゥムが自慰によって最初に生み出した双子の兄の方です(妹はテフヌト)。名前は「空虚」や「立ち上がる者」を意味します。頭にマアト(真理)の羽根をつけた姿で描かれ、世界に秩序と空間をもたらす重要な役割を担っています。彼は乾燥した風を象徴し、湿気を象徴するテフヌトと対になっています。
神話での伝説とエピソード
天地分離の神話
かつて、天の女神ヌトと地の神ゲブは愛し合って抱き合い、片時も離れようとしませんでした。そのため世界には空間がなく、何も生まれることができませんでした。父アトゥムの命を受けたシューは、二人の間に割って入り、力尽くでヌトを持ち上げ、ゲブを踏みつけました。これにより、天と地の間に「大気(シュー)」が生まれ、太陽が通る道ができ、生物が住む空間が出来上がったのです。
太陽の守護
彼は太陽神ラーの航海を守るため、混沌の蛇アペプと戦う役割も持っています。毎朝、太陽が昇るのは、シューが空を持ち上げているおかげなのです。
現代作品での登場・影響
生命の息吹
古代エジプト人は、生命は鼻から入る「息(シュー)」によって維持されると考えました。死者の口開けの儀式においても、シューの力が呼び起こされ、魂が再び呼吸できるように祈られました。彼は生命力の根源そのものを象徴する神でもあります。
アトラスとの比較
天空を支えるという役割から、ギリシャ神話の巨人アトラスと対比されることがありますが、アトラスが罰として支えているのに対し、シューは世界の秩序維持のために自ら支えている点が異なります。
【考察】その強さと本質
空間の概念
シューの存在は物理的な「気体」の発見とも言えます。目には見えないけれど、天は地に落ちてこない。そこには確実に「何か(空気)」が充満して支えているのだという、古代エジプト人の科学的な直感が神格化されたものです。彼は「間隔」や「境界」を維持する、物理法則的な神格と言えます。
まとめ
見えないけれど、常にそこにいる。空を見上げた時、そこにある青い空間こそがシューの身体なのです。深呼吸するたびに、私たちは神の一部を取り込んでいるのかもしれません。