ライオンの顔を持つ女神テフヌト。彼女は湿気と雨を司る恵みの神ですが、一度怒ると灼熱の太陽の女神に変貌し、地上のすべてを干上がらせてしまいます。彼女の機嫌一つで、エジプトは楽園にも地獄にもなるのです。
テフヌトとはどのような神か?
テフヌトはヘリオポリス九柱神の一柱で、シューの妹であり妻です。名前は「唾液」や「湿気」に関連し、雨や霧、朝露といった水分の原理を表します。しかし、彼女は「ラーの眼」としての側面も持ち、父ラーの敵を滅ぼすために、怒れるめすライオンとして敵を食い殺す凶暴さも秘めています。恵みの雨と、殺戮の炎。この極端な二面性こそが彼女の本質です。
神話での伝説とエピソード
女神の家出
ある時、彼女は父ラーと喧嘩をし、怒ってエジプトを飛び出し、南のヌビア砂漠へ家出してしまいました。湿気がなくなったエジプトは深刻な日照りと干ばつに見舞われ、人々は苦しみました。困り果てたラーは、知恵の神トトと風の神シューを派遣しました。二人はヒヒの姿などに化けて彼女を楽しませ、あの手この手でなだめて連れ戻しました。彼女が帰還すると、ナイル川は増水し、エジプトに豊かな実りが戻ったといいます。
最初のカップル
兄シューとは非常に仲が良く、二人が抱き合うことで世界に循環が生まれるとされました。彼らは性的なメタファーとしても語られ、生殖と繁栄の象徴でもあります。
現代作品での登場・影響
乾燥と湿潤のサイクル
この神話は、エジプトの気候サイクル(乾季と雨季、ナイル川の氾濫)を擬人化したものです。彼女の機嫌(移動)が、そのまま国家の経済と生存に直結していたため、テフヌトへの祭祀は極めて重要でした。
パズル&ドラゴンズ
人気ゲーム『パズドラ』では、水属性と木属性を持つキャラクターとして描かれ、2way攻撃などを駆使するアタッカーとして活躍しました。ライオンの要素は控えめですが、かわいらしい少女の姿で描かれています。
【考察】その強さと本質
自然の・両義性
水は生命を育みますが、太陽の熱もまた不可欠です。しかし、そのバランスが崩れれば災害になります。テフヌトはその両方のエネルギーを内包する、コントロール不能なダイナミックな自然現象そのものです。
まとめ
潤いと乾きを操る気まぐれな女神。彼女の怒りを買わないよう、私たちは自然環境に敬意を払い、常にその機嫌を伺いながら生きていくしかないのです。