妻である天空の女神ヌトの下で、常に仰向けに寝そべっている男神。それが大地の神ゲブです。父シュー(大気)によって妻から引き離され、起き上がることもできずに横たわっていますが、彼の体の上で人間は生活し、植物は育ち、王は国を統治します。多くの神話で大地は女神(母なる大地)とされることが多いですが、エジプト神話では男神である点が特徴的です。
横たわる大地
姿と象徴
全身に植物を生やした緑色の肌(肥沃な大地)、あるいは砂漠を表す乾いた肌で描かれます。頭にはガチョウ(アヒル)を乗せており、この鳥は彼の象徴として「大いなる口を開く者(Gengen-Wer)」と呼ばれ、その卵が太陽になったとも言われます。彼は大地を肥沃にする実り豊かな神であると同時に、作物を与えてくれる慈愛の神でもあります。
王権の正統性
神々の父
ゲブはオシリス、イシス、セト、ネフティスというエジプト神話に欠かせない主要な神々の父親です。そして、エジプトのファラオ(王)は「ゲブの座」を受け継ぐ者とされました。王の玉座は、大地の神によって物理的にも権威的にも支えられていたのです。
蛇の支配者
大地を這う蛇たちの王でもあり、蛇に噛まれた傷をいやす力を持つとされました。一方で、彼が笑うとそれが地震になると信じられ、恐れられてもいました。彼の体内(地下)には死者の魂が通る道があり、冥界への入り口でもあります。
ジョジョでのゲブ神
水のスタンド?
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するンドゥールのスタンド「ゲブ神」は水を操ります。本来は大地神ですが、エジプトにおいて大地とナイルの水は不可分な関係であり、地下水脈も大地の領域であるためと考えられます。大地と一体化して音を探知する戦法は、まさに万物を支えるゲブ神の能力と言えるでしょう。
まとめ
私たちが立っている大地、それこそがゲブ神の背中です。彼は植物を恵み、王権を支える偉大な土台として、今も静かに横たわり、遥か頭上の妻ヌトを見つめ続けているのです。