兄オシリスを惨殺したエジプト神話最大の悪役(ヴィラン)。しかし、それだけではありません。毎晩世界を滅ぼそうとする混沌の悪魔とたった一人で戦い続ける、孤独なヒーローという側面も持っています。善と悪、秩序と混沌の狭間で強烈な存在感を放つ、砂漠と嵐の神セト。その複雑で魅力的なキャラクターに迫ります。
セトとはどんな神か?
正体不明の「セト・アニマル」
彼の頭部は、ツチブタ、ジャッカル、ロバ、あるいはそれらを合成した架空の動物と言われており、生物学的に特定できていません。長く曲がった鼻と四角い耳が特徴です。彼は、エジプトを取り囲む不毛の砂漠、荒れ狂う嵐、そして外国(異邦人)を象徴する、恐るべき力の持ち主です。
嫉妬と狂気
兄であり王であるオシリスが人々から愛されていることに嫉妬し、彼を騙して殺害。さらに遺体をバラバラにして捨てるという残虐な行いに出ました。これは、農耕地(オシリス)を砂漠(セト)が侵食するという自然現象の神話化とも言われます。
悪役か、英雄か
ホルスとの泥沼バトル
オシリスの息子ホルスとは、王位継承権を巡って80年以上にわたる泥沼の戦いを繰り広げました。カバに変身して3ヶ月潜り続ける我慢勝負をしたり、ホルスに片目を奪われたり、逆にホルスの動きを封じたりと、力と知恵の限りを尽くして戦いました。
アペプ殺し
王位争いに敗れた後、彼は「ラーの舟」の先頭に立つという名誉ある役割を与えられました。そこには、ラーさえも睨み殺そうとする混沌の大蛇アペプが現れます。他の神々が恐怖で動けなくなる中、セトだけがその視線に耐え、槍でアペプを突き刺して撃退できるのです。彼は秩序(ラー)を守るために必要な「制御された混沌」なのです。
まとめ
セトは、完全な善人ではありませんが、彼がいなければ世界は闇に飲み込まれてしまう。嫌われ者だが実力は誰よりもある、そんな孤高のダークヒーローです。