エジプト神話において、ファラオの武力を象徴する アンフール(Anhur) は、槍を携えた勇猛な戦士の神です。ギリシャ語名では オヌリス(Onuris) と呼ばれ、アレスと同一視されました。彼の最大の特徴は頭に飾られた4枚の高い羽。その名は「遠方を連れ戻す者」を意味し、父ラーのもとから去った「太陽の目(女神)」を連れ戻す重要な役割を担っています。
天を支える戦士
遠方を連れ戻す者
アンフールの名は「アン(連れてくる)」「フール(遠方)」に由来します。これは、ヌビア(遠方)へ逃走したライオンの女神(テフヌトやセクメト、あるいはメヒト)をなだめ、エジプトへ連れ帰ったという神話に基づいています。この功績により、彼は「王冠を守る者」としてファラオの守護者となりました。
シューとの習合
後に大気の神シューと習合し、「アンフール=シュー」として信仰されるようになります。シューが天(ヌト)を支えるように、アンフールもまた天を支える柱としての性質を持ち、宇宙の秩序(マアト)を守る戦神として崇められました。
その姿と象徴
4枚の羽と槍
美術作品では、キルトを纏い、片手に長い槍(投げ槍)、もう片手でロープを持つ姿で描かれます。最大の特徴は頭上の頭飾りで、長い4枚の羽が直立しています。これは彼が高い空や風と関係があること、そして鳥やライオンといった狩猟対象を支配する力を示唆しています。
現代文化への影響
ゲーム・ファンタジー
アンヘールはゲーム『SMITE』などのMOBAや、エジプト神話を題材にした多くのファンタジー作品に登場します。一般には「破壊神」としての側面が強調されがちですが、本来は王を守る守護神としての性格が強い神です。彼の持つ槍は、どんな敵も貫く最強の武器として描かれることが多いです。
まとめ
アンフールは、単なる暴力の神ではなく、秩序を乱すものを討ち、去りゆくものを引き止める「統合と回復」の戦神でした。その槍は、国家の敵だけでなく、混沌そのものを貫くために振るわれたのです。