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九尾の狐:国を傾ける絶世の美女妖怪【玉藻前・殺生石・封神演義】

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九尾の狐 / Nine-Tailed Fox
九尾の狐

九尾の狐

Nine-Tailed Fox
中国伝承 / 日本伝承妖怪 / 神獣
危険度★★★★★
大きさ変化自在(本体は巨大)
特殊能力変化、魅了、狐火
弱点陰陽師の法力、鑑(鏡)
主な登場
NARUTO封神演義Fate/Grand Order

金色の毛並みに、ゆらめく九本の長い尾。絶世の美女に化けて時の皇帝や天皇をたぶらかし、贅沢三昧や残虐な振る舞いで国を滅亡の危機に追いやる、世界最強クラスの悪女妖怪。それが九尾の狐です。その正体は、数千年を生きた狐が強大な霊力を得て神格化した存在であり、中国、インド、日本と三国を股にかけて暴れ回った「三国伝来の金毛九尾の狐」として恐れられています。単なる怪物ではなく、国家転覆を企む知能犯にして、究極のファム・ファタール(運命の女)の物語を追います。

大陸を渡る傾国の美女

殷の妲己(だっき)

伝説の始まりは古代中国、殷(いん)王朝の末期です。九尾の狐は「妲己」という美女に憑依し、紂王(ちゅうおう)を誘惑しました。骨抜きにされた王は、酒で満たした池と肉を吊るした林(酒池肉林)で宴を開き、残虐な刑罰(炮烙の刑)を楽しんで人々を苦しめました。これが原因で殷王朝は周の武王によって滅ぼされました。この物語は『封神演義』で詳しく描かれています。 伝承によれば、その後彼女はインド(天竺)へ渡り、マガダ国の王子をたぶらかして悪行を尽くした後、再び中国へ戻り、遣唐使船に乗って日本へと渡ってきたとされています。

平安の玉藻前(たまものまえ)

日本に潜入した彼女は「玉藻前」と名乗り、平安時代の鳥羽上皇に仕える女官となりました。その美貌と博識さ(どんな難問にも答えられたといいます)で上皇の寵愛を受けましたが、やがて上皇が原因不明の病に倒れてしまいます。 陰陽師の安倍泰成(安倍晴明の子孫)が正体を見破り、祈祷を行うと、彼女は九本の尾を持つ巨大な狐の姿を現し、宮中から逃走しました。これは「国家転覆」を狙った最大級の霊的テロリズムだったのです。

那須野の死闘と殺生石

討伐軍の結成

正体を現して逃げた九尾の狐を追って、朝廷は上総介広常と三浦介義明を将軍とする8万の大軍(!)を那須野(現在の栃木県那須町)へ派遣しました。狐一匹に対して国家規模の軍事作戦が行われたのです。 犬を使った模擬訓練(犬迫物)などで万全の準備をした討伐隊は、激しい戦いの末、ついに九尾の狐を追い詰め、矢で射抜いて退治しました。

毒石となって祟る

しかし、九尾の狐の執念は死んでも終わりませんでした。その死体は巨大な石へと変わり、近づく生き物(鳥や昆虫、人間)を毒ガスで殺し続ける「殺生石(せっしょうせき)」となりました。数百年もの間、那須の地で祟りを撒き散らしていましたが、南北朝時代に玄翁(げんのう)和尚という高僧が石を杖で叩き割り(これがハンマーを「玄能」と呼ぶ由来です)、ようやく成仏させたと伝えられています。2022年には、この殺生石が自然に割れたことがニュースとなり、「封印が解けたのでは?」とSNSで話題になりました。

現代作品での九尾の狐

NARUTO

世界的人気漫画『NARUTO -ナルト-』の主人公うずまきナルトの体内には、「九喇嘛(クラマ)」と呼ばれる九尾の妖狐が封印されています。物語序盤では災害級の災厄として描かれましたが、徐々にナルトと心を通わせ、最強のパートナーとなる姿は、世界中の読者を熱狂させました。

吉兆のシンボル

実はもっと古い中国の書物(『山海経』など)では、九尾の狐は「太平の世に現れる瑞獣(おめでたい獣)」とされていました。尻尾が多いのは繁栄の証であり、王が優れた政治を行うと姿を現す吉兆だったのです。それがいつの間にか、男を破滅させる悪女の代名詞へと変貌していったのは、歴史の皮肉かもしれません。

【考察】権力と女性への畏怖

歴史のスケープゴート

国が滅ぶような大事件が起きた時、人々はその原因を為政者の責任ではなく、「王を狂わせた女(魔女)」のせいにすることで納得しようとしたのかもしれません。九尾の狐伝説は、男性社会における「権力を持つ女性」への根源的な恐怖と、滅びの美学が融合したダークファンタジーの傑作なのです。

【関連用語集】

  • 妲己(だっき):殷の紂王の妃。九尾の狐が化けていたとされる。酒池肉林の宴を開き、国を滅ぼした悪女の代名詞。
  • 玉藻前(たまものまえ):平安時代末期の鳥羽上皇の寵姫。非常に博識で美しかったが、その正体は九尾の狐だった。
  • 殺生石(せっしょうせき):栃木県那須町にある溶岩塊。付近で火山ガスが噴出しており、近づく生き物が死ぬことから、九尾の狐の怨念が宿るとされた。
  • 安倍泰成(あべのやすなり):平安時代の陰陽師。安倍晴明の子孫であり、玉藻前の正体を見破ったとされる。
  • 封神演義(ほうしんえんぎ):中国の明代に書かれた神怪小説。妲己が仙女(女媧)の命を受けて殷を滅ぼす物語が描かれている。

まとめ

美しさで人を狂わせ、死してもなお石となって毒を吐く。九尾の狐は、魅力と危険が表裏一体であることを教える、美しくも恐ろしい教訓なのです。