アポピス(エジプト語名:アペプ)は、古代エジプト神話における**「混沌(イスフェト)」と「闇」の象徴**である巨大な蛇です。秩序(マアト)の象徴である太陽神ラーの最大の宿敵であり、毎晩、太陽の舟を沈めようと襲いかかります。
終わらない夜の戦い
太陽の運行を阻むもの
エジプト神話では、太陽神ラーは昼間は空を渡り、夜は冥界(ドゥアト)を船で旅して翌朝に再生すると考えられていました。アポピスはこの冥界の川に潜み、ラーの乗る太陽の舟を飲み込んで、世界を永遠の闇に閉ざそうとします。
日食の原因
古代の人々は、日食はアポピスが一時的に太陽を飲み込んだために起きる現象だと考えていました。しかし、ラーを守護する神々(特にセトやイシス)の活躍により、アポピスは毎回撃退され、翌朝には再び太陽が昇ります。
意外な天敵:猫
聖なる猫
『死者の書』には、ラーが**「聖なる猫」**の姿をとって、アポピスを成敗する場面が描かれています。壁画には、猫がナイフを持ってアポピスの首を切り裂いている有名な図像が残されています。
アポピスを倒す儀式
古代エジプトの神殿では、「アポピスの書」という呪文集に基づき、蝋で作ったアポピスの人形に呪いをかけ、踏みつけ、槍で突き刺し、最後に火で燃やすという儀式が毎日行われていました。これにより、人々は太陽の再生と世界の秩序維持を祈願したのです。
地球に接近する小惑星
2004年に発見された地球近傍小惑星「99942 Apophis」は、この破壊神の名を冠しています。かつては地球衝突の危険性が騒がれましたが、最新の計算では衝突しないとされています。まさに現代においても「世界を脅かす(かもしれない)存在」として名を残しています。
まとめ
アポピスは、太陽という生命の源に対する根源的な恐怖(夜、日食、死)が形になった、偉大なる悪役です。彼が存在するからこそ、毎朝昇る太陽のありがたみと、それを守る神々の偉大さが際立つのです。