古代エジプト人にとって、太陽は自力で空を飛んでいるのではなく、太陽の舟に乗って天空のナイル川を航海していると考えられていました。この舟こそが、世界に光と秩序をもたらすシステムそのものであり、毎夜繰り返される死闘の舞台でもあります。
昼の舟と夜の舟
マンジェトとメセケテット
太陽の舟(バルク)には2つの形態があります。昼間、天空を東から西へ進むときはマンジェト(数百万年の舟)と呼ばれ、輝かしい姿で世界を照らします。一方、日没後に冥界ドゥアトを西から東へ進むときはメセケテット(夕方の舟)と呼ばれ、夜の闇を進む戦闘モードとなります。
アペプとの死闘
夜明けを懸けた戦い
冥界の航海は危険に満ちています。混沌の化身である巨蛇アペプが、毎晩舟を飲み込もうと襲いかかるからです。最強の護衛であるセト神や女神たちがアペプを撃退することで、舟は無事に東の地平線へと辿り着き、翌朝の「再生(日の出)」が約束されます。日食は、アペプが一時的に優勢になった状態だと恐れられました。
まとめ
太陽の舟は、宇宙の運行そのものを「航海」と捉えた雄大な想像力の産物であり、光が闇に打ち勝つサイクルの象徴です。