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雷神(ライジン):太鼓を打ち鳴らす天空の鬼神【風神雷神図・菅原道真・民俗学】

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雷神 / Raijin
雷神

雷神

Raijin
日本神話・民間伝承自然神 / 鬼神
神格★★★★★
大きさ人間より一回り大きい
権能落雷、太鼓を鳴らす、へそを取る
弱点蚊帳(かや)、桑原(くわばら)
主な登場
ゼルダの伝説ファイナルファンタジーモブサイコ100

「へそを隠さないと雷様に取られるぞ」。子供の頃、夏の夕立が降るたびに、大人たちからそんな風に言われて慌ててお腹を隠した経験はありませんか? 日本の空を支配する雷神(ライジン)は、虎の皮のパンツ(ふんどし)に身を包んだ筋骨隆々な鬼の姿で、背中には雷太鼓と呼ばれる小さな太鼓を輪のように連ねて背負った姿でお馴染みです。相棒の風神と共に描かれることが多く、その力強くもどこかユーモラスなビジュアルは、数百年にわたり数々のアート作品やキャラクターデザインのモチーフとなってきました。しかし、彼の正体は単なる「おへそ泥棒」ではありません。今回は、日本美術の最高峰から子供のオバケ話まで幅広く愛される、雷神のルーツと意外な豆知識、そして信仰の歴史について詳しく紹介します。

太鼓を背負った鬼の姿

視覚化された「雷音」

雷神の姿として現代の私たちの脳裏に完全に定着している「連なった太鼓(連太鼓)を背負い、バチを持った鬼」というビジュアル。これは、雷の「ゴロゴロ、ドカン!」というあの腹に響く轟音を、太鼓の音に見立てたことに由来します。古代の人々は、空の上で神様が巨大な楽器を力一杯打ち鳴らして演奏しているから、あのような大きな音が鳴り響くのだと考えたのです。見えない「音」という自然現象を、視覚的な「太鼓」というアイテムに変換した、昔の人の見事なイマジネーションと言えるでしょう。 また、その恐ろしい鬼の容貌は、雷という自然現象が持つ絶対的な破壊力と、人知を超えた恐怖を擬人化したものです。雷火による火災や、落雷による死は、古代人にとって抗えない神の怒りそのものでした。しかし、時代が下るにつれて(特に江戸時代の禅画や大津絵などでは)、太鼓をうっかり落として慌てて拾いに行く様子や、雲から足を踏み外して落ちて痛がる様子など、少しドジで愛嬌のあるキャラクターとして描かれることも増えていきました。これは、日本人が自然の脅威をただ恐れるだけでなく、ユーモア「笑い」に変えることで親しみを持って共存しようとした、たくましい心の表れかもしれません。

起源はイザナミの体?

実は日本神話(古事記)において、最初の雷神の記述はかなりグロテスクで衝撃的です。火の神カグツチを生んで火傷で死んでしまい、黄泉の国に行ったイザナミを、夫のイザナギが連れ戻そうと迎えに行った時のことです。禁止を破って見てしまったイザナミの姿は、腐敗してウジがたかり、変わり果てた腐乱死体となっていました。そして、その頭、胸、腹、陰部、手足などの8箇所から、それぞれ異なる色の雷神(八雷神:やくさのいかずちがみ)が発生し、ゴロゴロと鳴り響いていたのです。今のポピュラーな雷神像とは随分違いますが、雷が本来「死」や「穢れ」と結びつく強烈なエネルギー体であることを物語る原初的なエピソードです。

最強のコンビ:風神と雷神

俵屋宗達の傑作

雷神といえば、風の入った大きな袋をかついだ風神とセットで語られることがほとんどです。このイメージを決定づけたのが、江戸時代初期の天才画家・俵屋宗達による国宝『風神雷神図屏風』です。金色の背景の中、画面の両端にギリギリ配置され、躍動感あふれるポーズで対峙する二神の姿は、日本美術の最高傑作の一つとされています。この構図はあまりにも完成度が高く、後の尾形光琳や酒井抱一といった歴史的な巨匠たちによって模写され続け、現代に至るまでデザインのアイコンとして機能しています。 この二神は、仏教では千手観音を守る「風神・雷神」として、神道では風の神(シナツヒコ)と雷の神(タケミカヅチなど)として、宗派を超えて「自然の猛威」のシンボルとしてセットで祀られています。

「クワバラ」と菅原道真

雷神になった天神様

雷が鳴った時に唱えるおまじないとして有名な「クワバラ、クワバラ(桑原、桑原)」という言葉。これは、平安時代の貴族・菅原道真(天神様)に由来するという説が最も有名です。無実の罪を着せられて九州の太宰府へ左遷され、失意のうちに亡くなった道真は、その恨みから死後に日本史上最強最悪の怨霊となりました。彼は都にたびたび雷を落として祟りをなし、ついには天皇の住む清涼殿にまで落雷させ、貴族たちを焼き殺すという大事件(清涼殿落雷事件)を引き起こしました。 しかし、不思議なことに、彼がかつて領地としていた「桑原(くわばら)」という土地にだけは、一度も雷が落ちなかったといいます。そこから、人々は「ここはクワバラ(道真公の大切な土地)ですよ、だから雷を落とさないでください」という意味を込めて、この言葉を唱えるようになったのです。雷神信仰と御霊信仰(怨霊を神として祀る信仰)が融合した、日本独自の興味深い風習です。

【考察】へそを取る理由

「雷様がへそを取る」という迷信には、実は科学的な生活の知恵が含まれています。雷が鳴るような夕立の時は、湿度は上がりますが、気温が急激に下がることが多いです。冷たい風が吹き込むこともあります。そんな時に子供がお腹を出して無防備に寝ていると、風邪を引いてお腹を壊してしまう(いわゆる雷腹)。それを防ぐために、「へそを隠せ(ちゃんと布団や着物を着ろ)」と教えたのが始まりだと言われています。恐怖の対象である雷神を利用して、子供の健康を守ろうとした、昔の人の愛情と知恵が感じられる教育的エピソードです。

まとめ

恐怖の対象でありながら、雨をもたらす農業の守護神でもあり、時にはコミカルな隣人としても描かれる雷神。その多様な姿は、日本人が自然現象といかに付き合い、共存してきたかの歴史そのものなのです。