オオクニヌシの息子でありながら、国譲りの決断を下した知恵の神。釣り好きのエピソードから七福神の「恵比寿様」と同一視される、笑顔の裏に深い洞察を持つ神。
コトシロヌシとはどのような神か?
『古事記』に登場する国津神で、大国主神の息子です(事代主神)。天界からの使者タケミカヅチが国譲りを迫った際、大国主は返答を息子に委ねました。コトシロヌシは釣りをしていた船の上で「承知した」と答え、船を覆して手を打ち(柏手の起源)、海中に隠れました。この潔い態度は、彼が物事の是非を予知・判断する託宣の神であることを示しています。現在は福の神エビスとして広く親しまれています。
神話でのエピソード
神武東征の影
彼は後に神武天皇の皇后(ヒメタタライスズヒメ)の父となり、天皇家と出雲の神々の血を結びつける重要な役割を果たしました。
言霊の主
名前の「コトシロ」は「言を知る」=言葉(事柄)を治めるという意味であり、言葉によって現実を確定させる力を持っています。
信仰と後世への影響
えびす信仰
商売繁盛の神様として、鯛を抱えた姿で描かれます。これは国譲りの際、釣りをしていたことに由来します。
逆手拍手
彼が隠れる際に打った「天の逆手」は、呪術的な意味を持つ拍手とされ、現代の神道の柏手のルーツの一つです。
【考察】その本質と象徴
諦めの美学
抵抗せずに国を譲ることは、弱さではなく、天命を悟る賢さの表れでした。彼は無駄な血を流さず、平和的に時代の変化を受け入れたのです。
八重言代主神
彼の正式名称「八重言代主神(やえことしろぬしのかみ)」は、幾重にも重なる言葉(託宣)を司る神という意味です。彼の言葉は絶対に実現する「神勅」として、古代の政治決定において決定的な重みを持ちました。天皇を守護する八神の一柱でもあります。
まとめ
釣り竿一本で国の運命を決めた神。その笑顔は、未来を見通した余裕の表れです。