日本版『浦島太郎』のモデルとも言われる、竜宮城伝説の主人公。それが火遠理命(ホオリ)、通称山幸彦です。兄の釣り針をなくした失態から始まり、海の神の宮へ行き、美しい女神と結婚し、最終的に地上の支配権を確立していく彼のサクセスストーリーは、単なる冒険譚ではありません。神々がどのようにして地上の王(天皇)となっていったかを説明する、日本神話の重要なターニングポイントなのです。
海宮への旅と結婚
運命の出会い
兄・海幸彦の釣り針を失くして途方に暮れていたホオリは、塩椎神(シオツチノカミ)という老人の導きで、海神(ワタツミ)の宮殿へ向かいます。そこで海神の美しい娘・トヨタマヒメと一目で恋に落ち、歓迎されて結婚しました。ここが浦島太郎と違う点で、彼はお爺さんにならず、3年間を妻と共に幸せに過ごし、しかも強力な後ろ盾(海神)と魔法アイテム(潮満珠・潮干珠)を手に入れて地上へ帰還したのです。「失くしたものを探しに行ったら、もっとすごいものを手に入れた」という幸運の持ち主です。
王権の確立とその後
神武天皇への系譜
地上に戻ったホオリは、魔法の玉を使って兄を服従させ、高千穂の宮で580年もの長い間、国を治めました。彼とトヨタマヒメの間に生まれた子供がウガヤフキアエズであり、その子供が初代天皇・神武天皇となります。つまり、ホオリは神武天皇のおじいちゃんにあたります。山(狩猟)の神でありながら、海(漁労・航海)の支配権も手に入れたことが、天皇家が日本全土を統治する正統性の根拠となっているのです。
青島神社と信仰
ハネムーンの地
宮崎県の青島神社は、ホオリとトヨタマヒメが新婚生活を送った場所と伝えられています。周囲を「鬼の洗濯岩」と呼ばれる奇岩に囲まれた神秘的な島は、二人の愛の巣であり、現在では縁結びの強力なパワースポットとして人気を集めています。
まとめ
失敗(釣り針の紛失)から始まり、異世界での冒険を経て大きく成長した火遠理命。彼の物語は、未知の世界へ飛び込む勇気が一人の人生だけでなく、国の運命さえも変えてしまうことを教えてくれます。