いじめられていた亀を助け、その御礼に海中の楽園・竜宮城へと招待された漁師の浦島太郎。乙姫様(亀の化身とも、海神の娘とも)の歓待を受け、夢のような日々を過ごしました。しかし、故郷の親を案じて帰宅すると、そこは知っている人の誰もいない未来の世界でした。絶望して玉手箱を開け、瞬く間に老人になってしまうラストシーンは、異界訪問譚(神隠し)の典型であり、時間の残酷さを伝えています。
最古の物語
浦島子
『日本書紀』や『丹後国風土記』に記された古い伝承では、彼は「浦島子(うらしまのこ)」と呼ばれています。亀ではなく五色の亀(実は神の娘)を釣り上げ、蓬莱山(異界)へ行って結婚するという、より神話的な内容でした。ここでは玉手箱は「永遠の命(若さ)を保つための箱」であり、開けたことで神性を失い、死すべき人間(老人)に戻ったと解釈されます。
相対性理論?
「竜宮城での数日は、地上の数百年だった」という設定は、特殊相対性理論(ウラシマ効果)の喩えとしてSF作品などで頻繁に引用されます。異界と現世の時間の流れが異なるという概念は、世界中の神話に見られる共通のモチーフです。
常世の国
竜宮城は古代日本における「常世の国(とこよのくに)」、すなわち海のかなたにある理想郷のイメージと重なります。そこは死も老いもない永遠の世界ですが、一度行ってしまえば二度と故郷には戻れない(戻っても知っている世界ではない)という喪失感を伴います。浦島太郎の物語は、永遠への憧れと、限りある現世の命の尊さを対比させています。
玉手箱の謎
なぜ渡したのか
乙姫は「決して開けてはならない」と言って箱を渡しました。これは「いつか戻ってきてほしい(箱を持っている限り若いままでいられる)」という愛の証だったとする説と、「約束を破る人間への試練」だったとする説があります。開けてしまった太郎は老人になりましたが、一部の伝承ではその後、鶴になって飛んでいった(神になった)とも伝えられます。
まとめ
過ぎ去った時間は二度と戻らない。浦島太郎の物語は、異界への憧れと、現実世界に戻れなくなった者の孤独を描いた、日本文学屈指のメランコリックな名作です。