冬の夜空を見上げれば、そこには鼓(つづみ)の形をした美しい星座、オリオン座があります。そのモデルとなったオリオンは、ギリシャ神話に登場する超一流の狩人であり、海神ポセイドンの息子とされる巨人です。その巨体は海に入っても頭が水面に出るほどだったと言われています。美男子でありながら粗暴な一面も持ち、女神アルテミスとのロマンスや、なぜ彼がサソリに追われて空を逃げ回っているのか、その有名な伝説とその後の物語を紹介します。
傲慢な狩人とサソリの毒
「地上の獣を狩り尽くす」
狩りの腕に絶対の自信を持っていたオリオンは、クレタ島で「この世に狩れない獲物はいない、地上の獣をすべて狩り尽くしてやる」と豪語しました。この傲慢な言葉に怒った大地の女神ガイア(一説には貞操を守る女神ヘラとも)は、地中の裂け目から一匹の巨大なサソリを放ちました。
どんな猛獣も棍棒で打ち倒してきたオリオンでしたが、堅い甲羅と猛毒の針を持つサソリには敵わず、踵(かかと)を刺されてあえなく絶命してしまいました。この功績でサソリは天に上げられ「さそり座」となり、オリオンもまた星座となりましたが、彼は死してなおサソリを恐れています。そのため、さそり座が東の空から昇ってくると、オリオン座はいそいそと西の空へ逃げるように沈んでいくのだと言い伝えられています。
アルテミスとの悲恋
アポロンの策略
別の説では、狩猟の女神アルテミスと恋仲になったオリオンを快く思わなかった彼女の兄・太陽神アポロンが、二人を引き裂こうと画策します。ある日、オリオンが頭だけを水面に出して海を歩いているのを見たアポロンは、それを「沖に浮かぶ岩(または悪者)」だと偽り、アルテミスに「あの的を射抜けるか」と挑発しました。
弓の名手であるアルテミスは、それが恋人だとは知らずに見事に矢を放ち、オリオンを射殺してしまいます。海に打ち上げられたオリオンの遺体を見て嘆き悲しんだアルテミスは、父ゼウスに頼んで彼を星座にしました。冬の夜空でオリオン座の近くに輝くシリウス(おおいぬ座)は、彼の忠実な猟犬であり、主人が空に上がった後も彼を追いかけているのだと言われています。
まとめ
夜空で一番輝く英雄オリオン。その輝きは、彼の力強さと、神話に残る切ない物語を今に伝えています。冬の夜、オリオン座を見つけたら、彼の後ろをついていく子犬(おおいぬ座)や、彼が恐れるサソリ(さそり座)の位置関係にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。