森を駆け巡る狩りの名手であり、銀の弓矢を持つ美しき女神。太陽神アポロンとは双子の関係にある月の女神です。彼女は「純潔」を何よりも重んじ、それを脅かす者には死をもって報いる、美しくも恐ろしい自然の守護者です。アルテミス。野山を駆け、動物たちを従える、凛々しき処女神の横顔を紹介します。
アルテミスとはどんな女神か?
永遠の乙女
ローマ神話では「ディアナ」と呼ばれます。幼い頃、父ゼウスの膝に乗って「永遠の処女性」と「山野で自由に生きること」を願い、許可されました。彼女は決して結婚せず、連れている侍女たち(ニンフ)にも純潔を求めます。もし侍女が男と交われば、追放や動物への変身(カリストの熊変身など)という厳しい罰を与えました。
豊穣と多産の神
一般的なイメージはスレンダーな狩人ですが、古代のエフェソスなどでは、胸に多くの乳房(あるいは牛の睾丸)を持つ豊穣の女神として信仰されました。これは彼女が「手つかずの自然」だけでなく、「野生動物の繁殖」や「山の生命力」そのものを象徴していたからです。
容赦なき処罰のエピソード
鹿にされたアクタイオン
ある時、狩人のアクタイオンが森で迷い、偶然にもアルテミスが水浴びをしている裸を見てしまいました。彼女は激怒し、彼に水をかけて鹿の姿に変えてしまいました。言葉を話せなくなったアクタイオンは、自分自身が連れていた猟犬たちに襲われ、主だと気付かれずに食い殺されてしまいました。神の聖域を侵した代償はあまりにも大きかったのです。
悲劇の恋人オリオン
そんな彼女が唯一、心を許したのが狩人のオリオンでした(異説あり)。しかし、それを良しとしない双子の兄アポロンの策略に嵌められます。アポロンは海を泳ぐオリオンの頭を指差して「あれを射ることができるか?」と挑発しました。アルテミスはそれが愛するオリオンだとは気付かず、見事に弓で射抜いて殺してしまったのです。彼女は深く悲しみ、ゼウスに頼んで彼を空に上げ、オリオン座にしました。
現代作品でのアルテミス
Fate/Grand Order
「オリオン」として召喚されたクマのぬいぐるみに、おまけとしてくっついてきた美女として登場。本来の冷酷無比な女神の性格はなりを潜め、ダーリン(オリオン)一筋で恋に暴走するコミカルにデフォルメされたキャラクターとして描かれ、人気を博しました。
まとめ
アルテミスは、手つかずの自然そのものであり、美しいがゆえに侵してはならない聖域の守護者なのです。彼女の矢は、自然への敬意を忘れた人間に対する警告なのかもしれません。