輝かしきアーサー王伝説に終止符を打った張本人、「叛逆の騎士」モードレッド。彼は円卓の騎士の一員でありながら、アーサー王に対しクーデターを起こし、伝説の「カムランの戦い」で王と刺し違えました。単なる悪役として語られることの多い彼ですが、その出自には王家を巡るドロドロとした因縁と、父への歪んだ憧れが隠されていました。
王の甥にして息子、そして災厄
禁断の出生
モードレッドは表向きはアーサー王の姉モルガース(またはモルガン)の息子、つまり甥とされています。しかし実際は、アーサー王が異父姉とは知らずに関係を持って生まれた不義の息子でした。魔術師マーリンは「メイ祭に生まれた子供が王国を滅ぼす」と予言しましたが、アーサー王はわが子を手に掛けることを躊躇い、結果として破滅の種を残してしまいます。
歪んだ承認欲求
円卓の騎士となったモードレッドは、父である王に認められたいと願いました。しかし、王はその出自ゆえに彼を遠ざけ、王位継承者とは見なしませんでした。この絶望が、彼を激しい憎悪と反逆へと駆り立てていきます。
カムランの丘での決戦
王位簒奪
アーサー王がランスロットとの戦いでフランスへ遠征中、留守を任されたモードレッドは「王は死んだ」という虚報を流し、王位を簒奪。さらに王妃グィネヴィアを妻にしようとしました。これを知ったアーサー王は急遽帰国し、両軍はカムランの丘で激突します。
父子相食む最期
戦いの果て、ただ二人生き残ったアーサーとモードレッドは一騎打ちとなります。アーサーの聖槍ロンゴミアドがモードレッドの胸を貫きますが、モードレッドは槍に刺さったまま体を押し込み、剣クラレント(王の宝物庫から盗み出した儀礼剣)を振るって父の頭蓋を勝ち割りました。こうして騎士道時代は幕を閉じたのです。
現代作品でのモードレッド
Fate/Apocrypha
『Fate/Apocrypha』では、「赤のセイバー」として登場。なんと**女性(アーサー王のクローン)**という設定に大胆アレンジされました。「父上」と呼びながらも反抗期全開のヤンキー気質ですが、その根底にある「ただ一度、父に愛されたかった」という切ない願いが描かれ、絶大な人気を博しました。 クラレントは「我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)」という必殺技となり、赤い雷を放ちます。
【考察】必要悪としての役割
時代の終わりを告げる者
神話構造論において、モードレッドは「老いた王を殺し、次の時代を招く者」の役割を担っています。しかし、彼は次の王にはなれず、共に滅んでしまいました。これはケルト社会の衰退と、キリスト教的価値観への完全な移行を象徴する悲劇的な結末と言えます。
まとめ
モードレッドは、偉大な父を持ったがゆえに人生を狂わせた「持たざる者」の象徴です。その反逆は、完成されすぎた理想郷(キャメロット)に突きつけられた、人間的な叫びだったのかもしれません。