可憐な深窓の令嬢は、夫を殺された時、希代の復讐鬼へと変貌しました。クリームヒルト。英雄ジークフリートの妻であり、彼の仇を討つためなら、兄弟も、国も、自分自身さえも滅ぼすことを厭わなかった、執念の女。
クリームヒルトとはどのような英雄か?
『ニーベルンゲンの歌』のヒロインであり、ブルグント族の王女(北欧神話のグズルーンに相当)。英雄ジークフリートと結婚し幸せに暮らしていましたが、ハゲンによって夫を暗殺され、財宝も奪われました。その後、フン族の王エッツェル(アッティラ)と再婚し、強大な軍事力を手に入れると、ハゲンと兄グンターたちをフン族の宮廷に招き、罠にかけて大虐殺を行いました。最後は自らの手でハゲンの首を撥ねましたが、その残虐さに激怒した騎士によって斬り殺されました。
伝説でのエピソード
グズルーンとの違い
北欧神話のグズルーンは、兄弟を愛し、夫アッティラに復讐する役回りですが、ドイツのクリームヒルトは、亡き夫ジークフリートを愛し、兄弟に復讐する役回りです。愛の対象が逆転しているのが興味深い点です。
悪魔の女?
物語の後半、彼女は「悪魔(ヴァーランダリン)」と呼ばれ、憎悪の化身として描かれます。かつての慈悲深い王女の面影はなく、復讐の炎だけが彼女を動かしていました。
後世への影響と言及
Fate/Grand Order
『FGO』では、ジークフリートへの愛憎入り混じるバーサーカーとして登場。夫に「ごめんなさい」と言わせるために聖杯戦争に参加するという、歪んだ愛を見せつけました。
映画『ニーベルンゲン』
フリッツ・ラングの無声映画など、映像作品でも彼女の劇的な復讐劇は繰り返し描かれています。
【考察】その本質と象徴
被害者が加害者に
最も無垢だった被害者が、最も残虐な加害者になる。戦争と復讐の虚しさを体現する存在です。彼女の愛が深かった分だけ、世界に流された血も多かったのです。
まとめ
愛は人を強くしますが、人を狂わせもします。彼女が流した涙は、いつしか赤い血の海となりました。