英雄ジークフリートを背後から刺し殺した卑劣な男か、それとも主君と国を守るために汚名を被った忠義の士か。ドイツ叙事詩最強のダークヒーロー、ハゲン。その冷徹な瞳の奥にある真意は、ライン川の底に沈んでいます。
ハゲンとはどのような英雄か?
『ニーベルンゲンの歌』におけるブルグント王国の重臣です(北欧神話のヘグニに相当)。英雄ジークフリートが主君グンター王の名誉を傷つけた(ブリュンヒルドとの初夜の秘密を漏らした)ことを知り、主君を守るためにジークフリートの暗殺を計画します。弱点である背中の菩提樹の葉の跡を狙って彼を殺し、さらにクリームヒルトの復讐を恐れてニーベルングの財宝をライン川に沈めました。最後はクリームヒルトによって首をはねられました。
伝説でのエピソード
ニーベルングの指環
ワーグナーの『指環』では、アルベリヒの息子として登場し、指環を狙う明確な悪役として描かれます。しかし原典では、あくまでブルグント王家への歪んだ、しかし絶対的な忠誠心で動いています。
ラインの黄金
彼が沈めた財宝は今も見つかっていません。ハゲンは拷問されても隠し場所を吐かず、「王たちが生きている限り言わない」としらがを切り、王たちが死んだ後は「これで知っているのは私と神だけだ」と言い放って秘密と共に死にました。
後世への影響と言及
悪の美学
一見すると残忍な悪役ですが、破滅が待っていると知りながら主君と共にフン族の宮廷へ向かい、最後まで戦って死ぬ姿は、壮絶な「滅びの美学」を感じさせます。
トロンエ(トロイ)のハゲン
彼の出身地トロンエは、トロイアに由来するという説もあり、古代の英雄の血を引く者としての誇り高さを持っています。
【考察】その本質と象徴
必要悪
輝かしい英雄ジークフリートがいれば、主君グンターの影は薄くなり、国の秩序は乱れます。ハゲンは「過ぎたる力」を排除することで、王国のバランスを保とうとした、冷徹なリアリストでした。
まとめ
彼は笑いません。ただ静かに剣を研ぎ、主君のために地獄へ落ちる覚悟を決めているだけです。