目に見えないけれど、最も強い力。風神ヴァーユは、暴風のような破壊力と、生物を生かす呼吸(プラーナ)の両方を司る神です。英雄ハヌマーンやビーマの父でもあります。
ヴァーユとはどのような神か?
ヴァーユは「風」を意味し、インドラ、アグニと共にヴェーダの三位一体をなしたこともある重要な神です。北西の方角を守護するローカパーラ(世界守護神)であり、仏教では「風天」と呼ばれます。彼は物理的な風だけでなく、体内の風(呼吸・生命エネルギー)も支配します。
神話での伝説とエピソード
英雄の父
彼は怪力の持ち主であり、その息子たち(猿神ハヌマーン、パンダヴァ兄弟の次男ビーマ)もまた、圧倒的な怪力で知られています。
メル山の崩壊
神々の王インドラと賭けをし、神聖なメル山の頂上を風で吹き飛ばして海に落としました。これが現在のスリランカ島になったという伝説があります。
千の眼を持つ神
ヴァーユは時に、インドラ神と同様に「千の眼を持つ」と表現されます。これは風が及ばない場所はなく、世界の隅々まで見通している(触れている)ことを意味します。また、彼は神酒ソーマを最初に飲む権利を持つ神とされ、儀式においても非常に高い地位を与えられていました。
現代作品での登場・影響
アーユルヴェーダ
インドの伝統医学において、ヴァーユ(ヴァータ)は身体の機能を司る重要なドーシャ(体質素)の一つです。
風神雷神
日本の風神のイメージの源流の一つですが、袋を持っている姿はギリシャのボレアス等の影響とも言われています。
【考察】その強さと本質
命の運び手
呼吸が止まれば命が終わるように、ヴァーユは生命維持に不可欠な存在として、単なる天候神以上の敬意を払われています。
自由の象徴
「風は思いのままに吹く」という言葉通り、ヴァーユは神々の中で最も束縛されない自由な存在です。彼は特定の場所に留まらず、境界線を軽々と越えていきます。この性質は、精神的な解脱や、肉体の制約を超越しようとするヨーガ行者たちの理想とも重なり、修行者たちにとってヴァーユ(呼吸・風)のコントロールは悟りへの第一歩とされています。
まとめ
優しく頬を撫でる風も、木々をなぎ倒す嵐も、すべてはヴァーユの息吹。私たちは彼の掌の上で呼吸しているのです。