叙事詩『ラーマーヤナ』で大活躍する、風の神ヴァーユの子ハヌマーン。孫悟空のモデルになったとも言われるこの猿神は、インドでは現在でも絶大な人気を誇るヒーローです。
ハヌマーンとはどのような神か?
ハヌマーンは、猿の顔と尾を持つ半獣半人の神です。風神ヴァーユの息子であり、風のように空を飛び、体の大きさを自由に変えることができます。彼はヴィシュヌ神の化身である英雄ラーマに絶対的な忠誠を誓い、ラーマ王子の妻シータを魔王ラーヴァナから奪還するために、その超人的な能力をすべて捧げました。知恵と勇気、そして何より深い信仰心(バクティ)の象徴とされています。
神話での伝説とエピソード
薬草の山を運ぶ
ラーマ王子とその弟ラクシュマナが戦いで瀕死の重傷を負った際、ハヌマーンは彼らを救うためにヒマラヤにある「死者を蘇らせる薬草(サンジーヴァニー)」を取りに行きました。しかし、どの草が薬草なのか見分けがつかなかったため、彼はなんと山ごと引っこ抜いて戦場まで運んできました。この豪快なエピソードは彼の怪力と忠誠心を表す最も有名な説話です。
胸の中のラーマ
ある時、忠誠の証を見せるように言われたハヌマーンは、自らの胸を引き裂いて中を見せました。すると、彼の心臓にはラーマとシータの姿が刻まれていたといいます。彼は文字通り、心の中に常に主君を住まわせていたのです。
現代作品での登場・影響
孫悟空のルーツ
中国の『西遊記』に登場する斉天大聖・孫悟空のモデルは、このハヌマーンであるという説が有力です。空を飛び、山を持ち上げ、変身し、長い尻尾を持つという共通点は明らかです。
現代のインド
ハヌマーンは力と勇気の神として、レスラーやスポーツ選手から深く信仰されています。また火曜日はハヌマーンの日とされ、寺院は多くの参拝客で賑わいます。
【考察】その強さと本質
献身の美学
圧倒的な力を持ちながら、それを自分のためではなく主君のために使うハヌマーンの姿勢は、ヒンドゥー教における「バクティ(信愛)」の理想形とされています。
まとめ
愛と勇気の戦士ハヌマーン。彼の物語は、信じる心がいかに強大な力を生み出すかを、私たちに熱く語りかけてきます。