神話史上、最も悲劇的な加害者。盲目の神ヘズは、その目が見えないことを悪神ロキに利用され、最愛の兄バルドルを自らの手で殺してしまいました。無知と闇の象徴とされる彼は、許されることのない罪を背負ったスケープゴートです。
ヘズとはどのような神か?
ヘズ(ヘズル)はオーディンの息子で、バルドルの弟です。生まれつき盲目でしたが、身体能力や腕力は非常に高かったとされます。神々は、フリッグの誓いにより「バルドルにいかなる武器も石も傷つけない」という祝福がかけられているのを面白がり、バルドルに槍や石を投げつける遊びをしていました。しかし、目の見えないヘズだけは輪の外に立ち尽くし、寂しい思いをしていました。
神話での伝説とエピソード
ヤドリギの矢
そこにロキが近づき、「お前も兄さんの栄光を称えるべきだ、私が手を引いてやろう」と囁きました。ロキに手渡されたヤドリギ(ミストルティン)の枝を、言われるがままに投げたところ、ヤドリギだけは誓いの対象外であり、それがバルドルの胸を貫いて殺してしまいました。歓声は悲鳴に変わり、ヘズはその場で取り押さえられました。
復讐と再生
彼はその後、弁明の機会も与えられず、復讐のために生まれたヴァーリによって殺されました。しかしラグナロクの後、彼はバルドルと共に冥界から蘇り、過去を許し合って新しい世界を統治すると予言されています。
現代作品での登場・影響
闇と光
神話学的解釈では、バルドルが「光・夏」を象徴するのに対し、ヘズは「闇・冬」の象徴とされます。冬が夏を殺し、また夏が巡ってくる季節のサイクルの神話化です。彼の罪は、自然の摂理そのものでもあるのです。
【考察】その強さと本質
無知の罪
悪意がなくとも、無知であれば罪を犯してしまう。他人に唆されたとしても、実行したのは自分である。ヘズの物語は、知ることの重要性と、罪と許しのテーマを私たちに突きつけます。
まとめ
許された罪人。新しい世界で彼が開いた目には、もう二度と闇は映っていないでしょう。兄と並んで歩く未来こそが、彼の救済なのです。