アース神族の国母であり、最高神オーディンの正妻。フレイヤと名前が似ていて(しかも夫が同じオーズ/オーディンという名前で)混同されがちですが、奔放なフレイヤとは対照的に、彼女は理性的で家庭を守る「賢妻」です。しかし、ただの奥さんではありません。夫さえも知らない世界の運命を知りながらも沈黙を守る、思慮深くミステリアスなフリッグの横顔に迫ります。
フリッグとはどんな女神か?
玉座に座れる唯一の神
オーディン以外に、彼の玉座「フリズスキャルヴ」に座って全世界を見渡すことを許されている唯一の存在です。これは、彼女が王と同等の権威を持っていることを示しています。金曜日(Friday)の語源は、「フリッグの日」から来ているという説が有力です(フレイヤ説もあります)。
沈黙の予言者
彼女は糸を紡ぎながら網を織り、雲を作る女神であり、すべての運命を見通す予知能力を持っています。しかし、彼女はその悲劇的な未来を知っていても、決して口にすることはありません。それは「運命は変えられない」という北欧神話の無常観を誰よりも理解しているからでしょう。沈黙の中に悲しみを秘めた、強い女性なのです。
母としての奔走と智恵
バルドルへの契約
ある時、愛息子バルドルが悪夢を見ると、彼の死を予知したフリッグは、世界中の万物(火、水、鉄、石、木、病気、獣など)に「バルドルを傷つけない」という誓いを立てさせました。これによりバルドルは不死身になりましたが、まだ若すぎて無害に見えた「ヤドリギ」だけを見落としてしまいました。ロキはそこに目をつけ、盲目の神ヘズを騙してヤドリギの矢を投げさせ、バルドルを殺害させました。完璧な母の愛が生んだ、唯一のほころびでした。
智恵比べ
オーディンと人間の王の育成ゲーム(代理戦争)をした際、彼女は夫を出し抜いて、自分が加護を与える王を勝たせるなど、知恵比べでは最高神をも上回る切れ者ぶりを見せています。オーディンも彼女には頭が上がらないようです。
まとめ
フリッグは、変えられない運命の残酷さを知りながらも、諦めずに愛する者を守ろうとする、慈愛と賢明さの象徴です。彼女の沈黙は、言葉よりも雄弁な愛の証なのかもしれません。