オーディンの次男であり、神々の中で最も美しく、最も賢く、最も雄弁で、誰からも愛された完璧な貴公子。彼の笑顔は世界を照らし、彼が歩けば花が咲くと言われました。しかし、彼の物語は光に満ちた生ではなく、あまりにも悲しく呆気ない「死」によって有名です。彼の死こそが、神々の黄昏(ラグナロク)の幕開けとなる、世界にとっての希望そのもの、バルドルの悲劇を紹介します。
バルドルとはどんな神か?
歩く光源
彼の肉体からは常に眩い光が発せられ、その輝きは最も白い花(カモミールの一種)よりも美しいとされました。彼の住む「ブレイザブリク(幅広い輝き)」という館には、嘘や穢れといった不浄なものは一切入ることができません。彼は善意と正義の象徴でした。
ママとの契約(無敵の体)
ある夜、彼が悪夢にうなされ、自分の死を予感しました。心配した母フリッグは世界中を駆け回り、あらゆる動物、植物、石、鉄、病気、毒などに「バルドルを決して傷つけない」という誓いを立てさせました。これにより、彼は剣で切られても岩に潰されても傷一つつかない、最強の不死身の体を手に入れました。
ロキの悪意とヤドリギの矢
神々の悪ふざけ
不死身になった彼を祝って、神々は彼に石や槍を投げつけて「見ろ!弾き返したぞ!」「すげえ!」と遊ぶのがブームになりました。バルドル自身もそれを笑顔で受け入れていました。
ミストルティンの悲劇
しかし、へそ曲がりのロキだけはこれを面白く思いませんでした。彼はフリッグから「若すぎて誓いを立てさせなかった植物がある」ことを聞き出します。それが「ヤドリギ(ミストルティン)」でした。ロキはヤドリギの枝を鋭い矢(または槍)にし、盲目の神ヘズを騙して、その矢をバルドルに向かって投げさせました。無害だと思われていた枝はバルドルの胸を貫き、彼は絶命しました。世界中の全ての存在が泣き崩れた瞬間でした。
まとめ
バルドルは、世界の善意と美しさの象徴であり、それが失われた時、世界は秩序を失い、破滅(ラグナロク)へと向かうという、儚い希望のような存在です。