生まれてからわずか1日で大人になり、兄を殺した復讐の神ヴァーリ。彼はラグナロクの破滅を生き延び、新しい世界を担う次世代の神の一人です。その沈黙の背後には、神々の世界の残酷なシステムの真実が隠されています。
ヴァーリとはどのような神か?
ヴァーリはオーディンと、リンドという女神(あるいは女巨人)の間に生まれた息子です。彼の誕生には「バルドルを殺したヘズへの復讐」という明確かつ残酷な目的がありました。神話によると、彼は生まれてから手を洗うことも髪を梳かすこともせず、一言も発さずに1日で成人の体へと急成長しました。これは、復讐が完了するまで身を清めないという誓い、あるいは並々ならぬ執念の現れです。彼の存在は、秩序を守るためには肉親殺しも厭わない、北欧神話の厳しさを象徴しています。
神話での伝説とエピソード
復讐の遂行
バルドルがヘズの放ったヤドリギで死んだ直後、ヴァーリはオーディンの意図によって生み出されました。彼は生まれてすぐに弓を取り、異母兄であるヘズを見つけ出して射殺(あるいは撲殺)し、火葬の薪の上に送りました。これが彼の人生の最初の行動であり、存在意義でした。
新世界の神
彼は使命を果たした後も生き続け、神々の黄昏(ラグナロク)の炎の中でも生き残ります。アースガルズが滅んだ後、異母兄弟のヴィーダルと共に、かつて神々が住んでいたイザヴェル原野で再会し、復活したバルドルやヘズと共に、黄金の板を使って新しい神話の世界を築くと予言されています。
現代作品での登場・影響
2月の神?
バレンタイン(Valentine)と音が似ているため関連付けられることがありますが、神話的には無関係です。しかし、2月の凍てつく寒さの中に春の兆し(新しい世界)が含まれているように、彼もまた厳しい冬の時代の後に来る希望として解釈されることもあります。
魔探偵ロキ
アニメ・漫画作品では、ロキの宿敵や関係者として登場することがありますが、神話での直接的な絡みは意外と少ないです(ロキはヴァーリの誕生の原因を作った張本人ですが)。
【考察】その強さと本質
無垢なる殺意
生まれてすぐに殺人を犯す。そこに善悪の判断や葛藤はあったのでしょうか? ヴァーリは個人の感情を持つ「神」というよりは、血の復讐という「システム」そのものが擬人化した存在に見えます。システムの自浄作用としての暴力、それが彼の本質です。
まとめ
たった一つの使命のために生まれ、そして生き残った沈黙の神。彼の矢は過去を断ち切り、その足跡は未来へと続いています。新世界の夜明けに、彼は初めて笑顔を見せるのかもしれません。