派手な神話が少ないため地味に見えがちですが、実はクロノスの第一子(ゼウスの姉)であり、神々の中で最も敬われるべき長女。争いを避けるために自らオリンポス十二神の座を退いたとされる、究極の平和主義者ヘスティア。家の中の「火」を守り続ける、見えないけれど温かい、慈愛の女神の姿を紹介します。
ヘスティアとはどんな女神か?
竈(かまど)の守護神
ローマ神話では「ウェスタ」。家の中心にある囲炉裏や竈の火を司ります。古代において「火」は料理、暖房、照明のすべてを担う生活の命綱であり、同時に神聖な祭壇でもありました。そのため、彼女は全ての家庭、全ての神殿で、他のどの神よりも「最初と最後」に祈りを捧げられる特別な存在でした。「家内安全」そのものを擬人化したような女神です。
永遠の処女
その美しさと血統の良さから、アポロンとポセイドンという大物たちから求婚されました。しかし、彼女は自分が結婚することで神々の間に争いが起きることを恐れ、それを断固として拒否。ゼウスの頭に触れて「永遠に処女であり続けること」を誓いました。これにより、彼女は誰のものでもない、すべての家庭の母のような存在となりました。
譲り合いの精神
ディオニュソスへの交代
新入りの酒神ディオニュソスがオリンポス十二神に入りたがった時、席が足りませんでした。椅子取りゲームのような争いが起きそうになった時、ヘスティアは黙って自分の席を彼に譲り、自らはかまどの火の番をする裏方に回りました(諸説あり)。「争うくらいなら譲る」という、ギリシャ神話の神々とは思えないほどの謙虚さと優しさを持っています。このため、彼女を悪く言う神話や、人間を罰するような恐ろしい話はほとんど存在しません。
まとめ
ヘスティアは、華やかな栄光や冒険よりも、温かい日常、美味しい食事、そして平和な家庭を守ることを選んだ、影の実力者と呼ぶにふさわしい女神です。