ローマ神話では「バッカス」。陽気な酔っ払いの神様と思いきや、その本質は「理性の破壊者」であり「狂気の神」です。彼が通った後には、理性を失って踊り狂う信者たちによる破壊と殺戮の宴が残るとさえ言われる、危険なカリスマ。オリュンポス十二神の中で唯一、人間を母に持つという異色の経歴を持つ、遅れてきた最強のルーキーディオニュソスの伝説に迫ります。
ディオニュソスとはどんな神か?
ゼウスの太腿から生まれた
ゼウスとテーバイの王女セメレの間に宿りましたが、嫉妬したヘラの罠によって母セメレは焼死してしまいます。胎児だったディオニュソスはゼウスの太腿の中に縫い込まれ、臨月までそこで育てられて誕生しました。「二度生まれた者」という名の由来です。元は半神でしたが、酒を作る技術を発明し、世界中を放浪して信者を増やし、最終的に神として認められました。
酒と演劇のパトロン
ブドウ栽培とワイン作りを人間に教えた神です。ワインは悩みや苦しみを忘れさせますが、飲みすぎれば理性を失わせます。また、彼を称える歌や踊りの祭典が発展して「ギリシャ演劇」が生まれました。悲劇(トラジェディ)の語源は、彼に捧げられた「山羊(トラゴス)の歌」にあると言われています。
狂気の布教活動
狂乱する信女(マイナス)
彼に従う女性信者たちは、酒と踊りでトランス状態(狂気)に陥り、超人的な怪力を発揮して、生きた牛などの動物を素手で引き裂いて食べたと言われます。彼を拒絶し、侮辱したテーバイ王ペンテウスは、ディオニュソスの呪いによって狂わされた自身の母親アガウエーによって、ライオンと間違えられて八つ裂きにされてしまいました。
イケメンすぎて誘拐される
海辺で昼寝をしていた美少年の彼を、身代金目当ての海賊が誘拐しました。しかし、彼が笑うと船のマストから巨大なブドウの蔦が絡みつき、幻覚を見せられた海賊たちはパニックになって海へ飛び込み、イルカに変えられてしまいました。
まとめ
ディオニュソスは、人間が持つ「理性のタガ」を外し、生の解放感と死の狂気の両方を味わわせる、抗いがたい魅力を持った神です。酒も神も、適度に付き合うのが一番かもしれません。