死の国へ生きて還る。兄バルドルを取り戻すため、オーディンの愛馬スレイプニルを借りて冥界ヘルヘイムへと疾走した勇者、それがヘルモーズです。最も速く、そして最も兄弟思いの神。
ヘルモーズとはどのような神か?
ヘルモーズはオーディンの息子の一人で、その名は「勇気ある者」あるいは「戦いの心」を意味します。ギリシャ神話のヘルメスに相当する神々の使者(メッセンジャー)的な役割を担い、オーディンの意思を世界中に伝えます。彼の最大の見せ場は、死んだバルドルを蘇らせるために、生きたまま冥界へ交渉に向かったエピソードです。
神話での伝説とエピソード
冥界への旅
バルドルが死んだ時、誰か冥界の女王ヘルに交渉に行ける者はいないかと問われ、名乗り出たのがヘルモーズでした。彼は父の8本足の馬スレイプニルに乗り、9日9晩、光の射さない暗闇の谷を駆け抜け、死の川にかかるギョッル橋を渡りました。地獄の番犬ガルムをかわし、ヘルの宮殿に辿り着いた彼は、一晩そこで過ごし、ヘルに対して涙ながらに兄の返還を懇願しました。その情熱により、「世界中の全てのものが涙を流せばバルドルを返す」という条件を引き出すことに成功しました(結果的には失敗しましたが)。
ヴァルハラの案内人
オーディンの使者として、戦場で死んだ王たちをヴァルハラへ案内し、歓迎する役割を果たすこともあります。
現代作品での登場・影響
ヘルメスとの関係
名前も音も役割もギリシャ神話のヘルメスに似ていますが、ヘルモーズはトリックスター的な要素は薄く、より「騎士」「戦士」としての真面目な性格が強く描かれます。
英語の「Hermit」?
隠者(Hermit)とは語源的に関係ありませんが、孤独な旅人としてのイメージは重なる部分があります。
【考察】その強さと本質
越境者
生と死の境界を越えることができる彼は、シャーマン的な能力の持ち主であり、異界とのコミュニケーターです。絶望的な状況でも対話を試みる彼の姿勢は、外交官の理想像とも言えます。
まとめ
悲しき使命を背負い、彼は走る。その蹄の音は、暗闇の中で響く唯一の希望の音色でした。