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フクロオオカミ:人間によって滅ぼされたタスマニアの悲劇【絶滅動物図鑑】

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フクロオオカミ / Thylacine
フクロオオカミ

フクロオオカミ

Thylacine
現代 (タスマニア島)有袋類
危険度★★
時代現代 (1936年絶滅)
大きさ体長約100〜130cm
特殊能力大きく開く顎
弱点人間による乱獲
主な登場
タスマニア・タイガー(映画)

フクロオオカミ(Thylacine)は、かつてオーストラリア全土、そして晩年はタスマニア島にのみ生息していた、世界最大の肉食有袋類です。背中にトラのような美しい縞模様があることから「タスマニアタイガー」、あるいはオオカミに似ていることから「タスマニアウルフ」とも呼ばれます。彼らは古代の恐竜ではありません。つい100年前の1936年まで生きていた、私たち人類の「隣人」であり、そして人間の手によって絶滅させられた「被害者」のシンボルです。

オオカミに似た有袋類

外見はイヌ科の動物にそっくりですが、分類学的にはカンガルーやコアラに近い有袋類です。メスはお腹に後ろ向きの育児嚢(袋)を持っており、未熟な状態で産んだ子供を袋の中で育てていました。これは、全く異なる系統の生物が、似たような環境に適応して同じような姿になる「収斂進化(しゅうれんしんか)」の最も完璧な例として知られています。また、彼らは顎の関節が非常に特殊で、口を120度以上、時には180度近くまで大きく開くことができました(あくびをする映像が残っています)。

冤罪による虐殺

19世紀、タスマニア島に入植したヨーロッパ人は牧羊を始めましたが、羊が何者かに襲われる事件が多発しました。人々はフクロオオカミを犯人と決めつけ、政府は懸賞金をかけて徹底的な駆除を奨励しました。しかし近年の研究で、彼らの顎は羊の太い骨を噛み砕くほど強くなく、真犯人は野生化した犬(ディンゴ)や放し飼いの犬だった可能性が高いことが分かっています。彼らは「羊殺し」という無実の罪を着せられ、人間によって組織的に虐殺され、数を減らしていったのです。

最後の1頭「ベンジャミン」

野生の個体は1930年までに絶滅し、最後に残ったのはホバート動物園の「ベンジャミン」という1頭のオスでした。しかし、1936年9月7日の夜、飼育員が小屋の扉を閉め忘れ、ベンジャミンは寒さに震えながら凍死しました。これによって種としてのフクロオオカミは完全に絶滅しました。皮肉にも、そのわずか59日前に、タスマニア政府はフクロオオカミを保護動物に指定したばかりでした。現在、最新のバイオテクノロジーを用いて復活させるプロジェクトが進められていますが、失われた生命を取り戻すことの重さを問いかけています。

まとめ

フクロオオカミの悲劇は、偏見と無知がどれほど取り返しのつかない結果を招くかを私たちに突きつけています。残された白黒映像の中で歩き回る彼らの姿は、二度と帰らない「野生の威厳」そのものです。