翼を広げれば空を覆い尽くし、一たび羽ばたけば雷鳴が轟き、瞬きをすれば目から鋭い稲妻が走る。サンダーバード(雷鳥)は、北米大陸のネイティブアメリカン(インディアン)諸部族の間で、最も強力かつ普遍的に信仰されている精霊(マニ・ドゥ)です。トーテムポールの最上部に、翼を大きく広げた姿で彫られることも多いこの神鳥は、恵みの雨をもたらす偉大な英雄であると同時に、現代社会においては翼開長5メートルを超える巨大怪鳥UMA(未確認生物)としても世間を騒がせています。古代の神話と現代の現実世界の空を自由に飛び回る、伝説の鳥の正体に迫ります。
天空の支配者としての伝説
自然現象の神格化
サンダーバードは、文字通り「雷(Thunder)」と「鳥(Bird)」が合体した存在です。雷雨という激しい気象現象が、巨大な鳥の仕業として解釈され、神格化されたものです。彼らは人間が絶対に立ち入れない高山の頂上に住み、翼の羽ばたきで雲を集めて黒雲を作り、嘴を開いて雷鳴を轟かせ、雨を降らせます。 それは干ばつに苦しむ乾いた大地に水を与える恵みの行為であり、豊穣の象徴ですが、ひとたび怒らせれば、洪水や落雷で人間に罰を与える荒ぶる神でもあります。沖合からクジラを持ち上げて運ぶほどの怪力を持つとも言われており、その力は自然界でもトップクラスとされています。
水中の敵との永遠の戦い
多くの部族の神話で、サンダーバードは「角の生えた大蛇」や「水中の豹(ミシピシュ)」といった水棲の怪物と激しく敵対するライバル関係にあります。 空(雷・火)と海(水)の対立構造、あるいは天の鳥と地の蛇の対立(インド神話のガルーダとナーガのような)は、世界中の神話に共通するモチーフです。サンダーバードが水面に雷を落とすのは、いたずらに荒らしているのではなく、水中の邪悪な怪物を攻撃し、退治するためだとも伝えられています。この戦いは、世界の均衡を保つための永遠の儀式であり、自然界のダイナミズムそのものを表しています。
UMAとしての目撃談:失われた写真
消えた巨鳥写真(サンダーバード写真)
19世紀後半、アリゾナ州の砂漠で数人のカウボーイが巨大な怪鳥を撃ち落とし、その死体を納屋の壁に釘付けにして記念撮影をした……というきわめて有名な都市伝説があります。 不可解なことに、世界中の多くの人が「昔、新聞やオカルト本の特集でその写真を見たことがある!」と記憶しているにもかかわらず、研究者たちがどれだけ探しても、実際の写真は一枚も見つかっていません。これは「マンデラ効果(集団的な記憶違い)」の代表例としても語られます。人々の集合的無意識の中にだけに存在する、不思議な写真(ロストメディア)なのです。あるいは、本物は歴史から抹消されてしまったのでしょうか?
子供をさらう恐怖の鳥
1977年、イリノイ州ローンデールで、庭で遊んでいた10歳の少年が二羽の巨大な鳥に襲われ、一時は数メートルも空中に持ち上げられたというショッキングな事件が報告されています。少年は母親の悲鳴のおかげで離されましたが、服には鋭い爪痕がくっきりと残っていました。このように、人間(特に子供)を獲物と認識して襲ってくる実体のある怪物としての目撃談も後を絶ちません。ペンシルベニア州やアラスカ州などでも目撃例があり、既知のコンドルやワシの誤認では説明がつかないサイズだと証言されています。
現代作品でのサンダーバード
ファンタスティック・ビースト
映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、物語の鍵を握る重要な魔法動物として登場しました。主人公ニュートがアメリカに来た目的は、密猟者から保護したサンダーバード「フランク」を故郷のアリゾナの荒野に帰すことでした。美しく輝く金色の体と、天候を変えるほどの強大な力を持つ姿は、観客に強烈な印象を与えました。
ポケモンとX-MEN
世界的人気ゲーム『ポケットモンスター』に登場する伝説のポケモン「サンダー」のモデルであることは言うまでもありません。全身が刺々しい黄色い羽毛で覆われ、雷を操る「電気・飛行タイプ」という組み合わせは、まさにサンダーバードそのものです。また、マーベル・コミックの『X-MEN』シリーズにも、同名のキャラクターが登場します。超人的な能力を持つヒーローの名前としても愛されています。
【考察】古代の生き残り?
アルゲンタヴィスとテラトルニスコンドル
かつて南米には、翼開長7メートルを超える史上最大の鳥「アルゲンタヴィス」が生息していました。また北米には「テラトルニスコンドル」という巨大コンドルもいました。 もしかすると、数万年前にベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸へやってきた初期の人類(パレオ・インディアン)は、こうした巨大鳥類と共存しており、その記憶が世代を超えて語り継がれ、神話化してサンダーバードになったのかもしれません。あるいは、プテラノドンのような古代の翼竜の生き残りが、今も北米の広大な空を飛んでいる……と夢想するのもUMAの醍醐味です。
まとめ
嵐の夜、空が激しく光って雷鳴が響いたら想像してみてください。それは雲の上で、サンダーバードが巨大な翼を広げ、大空を支配している瞬間なのかもしれません。自然への畏怖が生んだこの鳥は、今もアメリカの空の王者として君臨しています。