戦いに明け暮れる北欧神話の戦士たちにとって、最大の楽しみは夜の宴です。その宴で振る舞われる最高級の「蜜酒(ミード)」、実は一頭の山羊から絞られていることをご存知でしょうか?ヴァルハラのアイドル、ヘイドルンを紹介します。
ヘイドルンとは?
ヴァルハラの屋根に住む山羊
ヘイドルンは、オーディンの宮殿ヴァルハラの屋根の上に住んでいる雌山羊です。彼女はそこで、世界樹ユグドラシルの枝から生える「レーラズ」という樹の葉を食べて暮らしています。
無限の蜜酒
驚くべきは、彼女の乳房からはミルクではなく、極上の**蜜酒(ミード)**が溢れ出るということです。その量は凄まじく、大釜を満たし、ヴァルハラに集う無数の戦士(エインヘリャル)たち全員が飲み食いしても尽きることがないと言われています。
神話での役割
戦士たちの癒やし
昼間は殺し合いの演習を行い、夜は復活して宴会を開くエインヘリャルたち。死と再生を繰り返す彼らにとって、ヘイドルンの蜜酒は魂を癒やす唯一の娯楽であり、活力の源です。
牡鹿エイクスュルニルとの関係
ヘイドルンの隣には、同じくレーラズの葉を食べる牡鹿「エイクスュルニル」もいます。この鹿の角からは滴がたれ落ち、それがフヴェルゲルミルの泉に注ぎ込み、世界中の河川の源流になっているとされています。
現代作品でのヘイドルン
ゲーム作品での扱い
『ファイアーエムブレム ヒーローズ』などのゲーム作品においては、キャラクターとして擬人化されたり、回復アイテムの元ネタとして登場することがあります。戦いに疲れたプレイヤーを癒やすマスコット的な存在と言えるでしょう。
【考察】なぜ山羊なのか?
豊穣の象徴
山羊は古代より豊穣や生命力の象徴とされてきました。トール神の戦車を引くのも山羊(タングリスニとタングニョースト)であり、北欧の人々にとって山羊は生活に密着した、恵みをもたらす重要な家畜だったことが窺えます。
まとめ
英雄たちが集う勇壮なヴァルハラで、黙々と葉を食べ、酒を振る舞い続けるヘイドルン。彼女こそが、北欧神話の「宴」を支える影の功労者なのです。