悲劇から生まれる神もいる。最愛の妻を焼き殺された悲しみと怒りの中で、イザナギが振るった十拳剣。その剣先から滴る血が岩を裂いた時、石析神(イワサク)は誕生した。
血と剣の神話
迦具土神の死
火の神カグツチを出産したことでイザナミが亡くなると、嘆き悲しんだイザナギは腰の「天之尾羽張(アメノオハバリ)」という十拳剣を抜き、我が子であるカグツチの首を斬り落とした。
剣の先から滴る血
この時、剣の切っ先から飛び散った血が岩場に落ち、そこから生まれたのが**石析神(イワサク)と根析神(ネサク)**である。 名前の通り「岩(石)を裂くほどの威力」を神格化した存在であり、剣の切れ味そのものを象徴している。
武神の系譜
フツヌシの祖
『日本書紀』の一書では、イワサク・ネサクの子孫から、あの国譲りの英雄・**経津主神(フツヌシ)**が生まれたとされる。 つまり、イワサクは日本神話における「剣の神」「武神」の偉大なるルーツの一つなのである。
【考察】破壊と創造
鉄作りとの関連
「岩を裂く」という性質から、鉱山採掘や鍛治(製鉄)との関連も指摘される。 硬い岩盤を砕いて鉱石を取り出す採掘作業の守護神としても信仰されていた可能性がある。
まとめ
石析神は、悲しみと怒りという激しい感情から生まれた、鋭くも純粋な力の結晶である。