京都の台所には必ずといっていいほど「火の用心」のお札が貼られています。その総本山こそが愛宕山に鎮座する愛宕権現です。単なる火の神というだけでなく、戦国武将たちが崇拝した「勝軍地蔵」としての猛々しい顔も持っています。
愛宕権現とは何か
火伏せの神の総本山
愛宕権現は、全国に約900社ある愛宕神社の総本社、京都・愛宕山に祀られる神です。古くから「火伏せの神」として絶大な信仰を集め、防火の神符は京都の家庭の必需品となっています。
複雑な神仏習合
その正体は複雑で、神道ではイザナミや火の神カグツチとされますが、仏教(修験道)では勝軍地蔵(将軍地蔵)と同一視されました。猪に乗った武装した地蔵菩薩という特異な姿で描かれることが多く、これは愛宕山が猪の生息地であったことに由来するとも言われます。
大天狗「愛宕山太郎坊」
日本一の大天狗
愛宕山は天狗の聖地でもあり、ここに住む愛宕山太郎坊は、鞍馬山僧正坊や比良山次郎坊と並ぶ、日本でも最強クラスの大天狗とされています。数千の天狗を従え、都の守護を担っていたと伝えられます。
本能寺の変との関わり
明智光秀が本能寺の変を起こす直前、愛宕山に参籠し、愛宕権現(勝軍地蔵)の前でくじを引いたエピソードは有名です。「ときは今...」の連歌もここで詠まれました。武神としての側面も強かったことが伺えます。
現代における信仰
千日詣り
7月31日の夜から8月1日の早朝にかけて参拝すると、千日分の火伏せのご利益があるといわれる「千日詣り」には、今でも多くの参拝者が訪れます。3歳までに登ると一生火事に遭わないという言い伝えもあり、親子連れの姿も多く見られます。
【考察】防火と戦勝の二面性
火を操る力
火を鎮めるということは、火を支配するということでもあります。愛宕権現が最強の戦勝神として崇められたのは、火(攻撃力)を自在に操る霊力への畏怖があったからでしょう。
まとめ
愛宕権現は、京都の町を火災から守り続けてきた心強い守護神です。その奥には、母神イザナミの悲劇や、武神としての荒々しい力が秘められています。