「アリーに勝る英雄なく、ズルフィカールに勝る剣なし」。この言葉と共に語り継がれるズルフィカールは、イスラム世界におけるエクスカリバーとも言える最強の聖剣です。最大の特徴は、切っ先が蛇の舌のように二股に分かれていること。この奇妙な形状にはどんな意味があるのでしょうか?
アリーの愛剣
預言者からの贈り物
元々は預言者ムハンマドが戦利品として得た剣でしたが、勇猛な従兄弟であり娘婿のアリーの戦いぶりを称え、彼に授けられました。 アリーはこの剣を振るって数々の戦いで無双し、イスラム教の拡大に大きく貢献しました。特にウフドの戦いでの活躍は伝説的で、アリーが敵を斬り伏せるたびに、天使ガブリエルが冒頭の言葉を叫んで称賛したと言われています。
脊柱という意味
「ズルフィカール」という名は「(脊椎の)節を持つもの」という意味だとされます。刀身に波状の模様があったとも、切っ先の形状が背骨のようだったとも言われていますが、正確な形状は謎に包まれています。曲刀シャムシールの一種とされることが一般的です。
なぜ二股なのか?
敵の目を欺く?
切っ先が2つあることで、敵の剣を受け止めたり、傷口を広げたりする実戦的な効果があったとも、単に「他とは違う特別な剣」であることを示すシンボルだったとも言われます。 中世のイスラム圏の絵画では必ず二股(または刃が2本ある)の姿で描かれており、これが「英雄の剣」のアイコンになっています。
現代への影響
国旗やエンブレムに
イランやパキスタンなど、イスラム諸国では軍のエンブレムや勲章のデザインとしてズルフィカールが頻繁に使われており、勇気と勝利の象徴として親しまれています。
【考察】実在したのか?
名剣の代名詞
実物は行方不明ですが、後世の王たちが「これがズルフィカールだ」と称する剣を何本も作らせました。それだけ、統治者にとって「アリーの武勇にあやかりたい」という思いが強かった証拠でしょう。
まとめ
独特なフォルムと圧倒的な武勇伝。ズルフィカールは、砂漠の英雄伝説を彩る、美しくも恐ろしい相棒なのです。