ヴァサヴィ・シャクティ(Vasavi Shakti)、あるいは単に「シャクティ」と呼ばれるこの武器は、『マハーバーラタ』の悲劇の英雄カルナが切り札として所持した神槍です。雷神インドラの力そのものを宿しており、誰に向けて放っても決して外れず、必ず相手を殺すという因果律に干渉するほどの威力を持ちますが、その代償として「一度使うとインドラの元へ帰ってしまう(二度と使えない)」という厳しい制約がありました。
黄金の鎧との交換
欺瞞と取引
カルナは生まれながらにして、あらゆる危害を跳ね返す「黄金の鎧と耳輪」を身に着けていました。カルナの敵対者であるアルジュナを守りたいインドラ神は、バラモンに化けてカルナに鎧を寄越すよう迫ります。カルナは相手が神であると見抜きながらも、自らの施しの誓いを守るために皮膚ごと鎧を剥がして与えました。その高潔さに感服したインドラが、対価として授けたのがこの槍です。
悲劇の行方
本命には使えず
カルナはこの槍を宿敵アルジュナを倒すために温存していました。しかし、夜間の戦いで羅刹(ラークシャサ)のガトートカチャが猛威を振るい、味方の軍が壊滅の危機に瀕した際、ドゥルヨーダナの懇願に折れ、ガトートカチャに対して使用してしまいます。槍は確実にガトートカチャを殺しましたが、最大の手札を失ったカルナは、後の決戦でアルジュナに敗れることになりました。「本命以外に使わされた」こと自体が、彼の悲劇性を物語っています。
まとめ
ヴァサヴィ・シャクティは、絶対的な力と、それを行使するタイミングの難しさを象徴する武器です。最強の矛を持ちながらも、運命の悪戯によって勝利を逃したカルナの生き様と、切っても切り離せない関係にあります。