シャンシャンという澄んだ金属音。シストラムは古代エジプトで最も神聖視された楽器の一つです。現代の「ガラガラ」の原型とも言えるこの打楽器は、単なるリズム取りではなく、神々を喜ばせ、悪霊を退散させる強力な呪具でした。
ナイルのせせらぎ
構造と象徴
シストラムはU字型の金属フレームに数本の横棒が渡され、そこに小さな金属板が通されています。振ると触れ合って音が鳴る仕組みで、この音はナイル川がパピルスの茂みを揺らす音を模しているとも言われています。女神ハトホルやイシス、バステトの祭儀には欠かせないアイテムでした。
破壊神をなだめる
鎮魂の音色
ハトホル女神は時に破壊的な側面(セクメト)を見せますが、シストラムの音色には彼女の怒りを鎮め、穏やかな喜びをもたらす効果があると信じられていました。また、その鋭い音は、混沌の蛇アペプなどの魔を追い払う「結界」の役割も果たしていたのです。
まとめ
音楽が持つ「場の空気を変える力」を、古代エジプトの人々はシストラムという形ある神具として具現化し、信仰の中心に据えていたのです。