古代エジプトで最も愛されたアイドル、それがバステトです。優雅な猫の頭を持つ姿で知られ、家庭の平安、子供の健康、そして音楽や踊りなどの「楽しいこと」を司る陽気な女神です。しかし、かわいいだけではありません。元々は獰猛なライオンの女神であり、敵に対しては容赦なく爪を立てて襲いかかるという、強烈な二面性を持っています。現代人の「猫愛」の原点とも言える、彼女の魅力と秘密に迫ります。
バステトとはどんな女神か?
猫そのもの
猫の頭を持つ女性、または猫そのものの姿で描かれます。手には「シストラム」というガラガラ鳴る楽器を持っており、お祭りやダンスが大好きです。古代エジプトでは猫はネズミから穀物倉庫を守る益獣として、また魔除けの力を持つ神聖な生き物として扱われ、人間と同じようにミイラにして手厚く葬られました。誤って猫を殺した人間が死刑になったという記録があるほど、異常なまでに大切にされていたのです。
セクメトとの関係
元々はライオンの頭を持つ戦いの女神であり、太陽神ラーの敵を殺戮する恐ろしい神でしたが、時代が下るにつれて、その獰猛な側面が切り離されて「セクメト」となり、穏やかな「猫」の側面が「バステト」として独立しました。しかし、「バステトが怒るとセクメトになる」と信じられており、怒らせてはいけない相手であることに変わりはありません。
王家の守護者
ラーの目
太陽神ラーの娘であり、「ラーの目」として父を守るボディーガードの役割も担っていました。夜になると太陽の舟の舳先に立ち、闇の中から襲いくる悪の大蛇アペプを、ナイフを使って撃退すると言われています。可愛らしい見た目に反して、戦闘能力はエジプト神話の中でもトップクラスです。
ギリシャ神話への出向
ギリシャ神話にもゲスト出演(同一視)しており、怪物テュポンに襲われて神々が逃げ惑った際、彼女は猫に変身してエジプトへ逃げたというエピソードがあります。これが、西洋魔術などで「猫=魔女の使い魔」というイメージに繋がったとも、逆に彼女が猫女神として定着する一因になったとも言われています。
まとめ
バステトは、愛らしさと野性味、癒やしと強さを兼ね備えた、まさに「猫」という生き物の魅力をそのまま神格化した存在です。気まぐれですが、信じる者を悪いものから全力で守ってくれる、頼れるお母さん猫のような神様なのです。