円卓の騎士トリスタンといえば、「トリスタンとイゾルデ」の悲恋物語で有名ですが、彼が騎士の中でも屈指の弓の名手であったことは意外と知られていません。その愛弓フェイルノートは、「失敗(Fail)がない(Naught)」、つまり「無駄なしの弓」という名が示す通り、狙った獲物を決して逃さない必中の名器として語り継がれています。
名前は後付けだった?
古典には名前がない
実は、アーサー王伝説の中世の原典(トマス・マロリー版など)には「フェイルノート」という名前の武器は登場しません。トリスタンが森での狩猟を得意とし、天才的な弓の腕前を持っていた描写は確かにありますが、武器に固有名がついたのは、比較的新しい時代の創作(おそらく19世紀以降の再話や、現代のゲーム的解釈)である可能性が高いです。
Fateによるイメージ定着
現代のサブカルチャーにおいては、特に『Fate/Grand Order』などの影響で、「竪琴(ハープ)の機能を単体で備えた弓」として描かれることが多くなりました。弦を弾いてカッターのような真空波を飛ばしたり、美しい旋律(音波)で精神攻撃を行ったりと、吟遊詩人としても名高いトリスタンらしい、優雅かつ凶悪な戦い方を見せます。
愛の薬と死の予感
決して外さないが、運命は外れる
フェイルノートはいかなる野獣も射止めましたが、トリスタン自身は「愛の秘薬」を誤って飲んだことで、主君マルク王の妻イゾルデとの道ならぬ恋に落ちてしまいました。弓の腕前で多くの敵を倒し、竜さえも退治しましたが、自身の破滅的な運命の矢を避けることはできませんでした。最後は、嫉妬に狂った妻(白い手のイゾルデ)の嘘によって、愛する人が来ないと誤解したまま絶望して息絶えるという、騎士道物語の中でも最も悲しい最期を迎えます。
まとめ
フェイルノートは、歴史のミッシングリンクから生まれた「あり得たかもしれない伝説」です。その美しい名前と必中の能力は、自分の意志ではどうにもならない運命に翻弄された、悲劇の騎士にふさわしい響きを持っています。