ファンタジー作品でおなじみの「炎の剣」の元ネタの一つかもしれない、ウェールズの伝説の剣ダーンウィン。「白き柄」を意味するこの剣は、ただ鋭いだけでなく、持ち主の人格を試す「選定の剣」としての側面を持っていました。正しい者が振るえば悪を焼く聖なる炎となり、そうでない者を拒絶する、気高き魔剣の伝説。
ブリテンの十三の宝物
持ち主を選ぶ炎
ダーンウィンは、「ブリテン島の十三の宝物」の一つに数えられる名剣です。その最大の特徴は、**「高潔な生まれの者が抜くと、鍔から切っ先までが激しい炎に包まれる」**という点です。 これにより、持ち主は夜の闇を恐れる必要がなく、また戦闘においては恐るべき火力を発揮しました。逆に、相応しくない卑しい者が抜こうとすると、炎が逆巻いてその手を焼き尽くしてしまいます。
気前の良いライデル
誰も借りたがらなかった剣
この剣の本来の持ち主は、6世紀頃の実在の王とされる「北のライデル(Rhydderch Hael)」です。彼は「気前の良いライデル」というあだ名を持つほど太っ腹な王で、誰にでも自分の武器や財産を貸し与えました。 しかし、ダーンウィンだけは誰も借りようとしませんでした。人々はこの剣の**「人を選ぶ炎」の魔力を恐れ**、やけどを負うのを避けたため、結果としてライデル専用の武器になったという皮肉な逸話が残っています。
現代作品への影響
あまり知られていない名剣
エクスカリバーやダインスレイフに比べるとマイナーですが、創作の世界では「隠れた最強武器」として扱われることがあります。 『ディズニー映画 コルドロン』の原作小説『プリデイン物語』では、物語の鍵を握る伝説の黒い剣として登場し、主人公タランの成長と共にその真価を発揮します。
【考察】選定の剣の元祖?
アーサー王伝説との関連
「ふさわしい者しか抜けない(使えない)」というモチーフは、アーサー王の「石に刺さった剣(カリバーン)」に通じるものがあります。ケルト・ウェールズ地方の伝承はアーサー王伝説の土台となっており、ダーンウィンもまた、王権の正当性を証明するレガリア(宝器)の一つとしての役割を持っていたと考えられます。
まとめ
ダーンウィンは、単なる武器ではなく、使う者の魂の輝きを物理的な炎として可視化する鏡のような剣でした。その白い柄を握ることができるのは、真の勇気を持つ者だけなのです。