翼の生えた杖に、2匹の蛇が螺旋状に絡み合うデザイン。ケリュケイオン(ラテン語でカドゥケウス)と呼ばれるこの杖は、ギリシャ神話のトリックスターにして伝令神、ヘルメスのトレードマークです。錬金術の記号としても知られ、現代において最もデザイン化されている神話アイテムの一つですが、実は「誤解されて使われている」アイテムの代表格でもあります。
平和と商業の象徴
争いを止める魔法
ある時、ヘルメスが野原で激しく喧嘩している2匹の蛇の間に杖を入れたところ、蛇たちはピタリと争いをやめ、仲直りして杖に巻き付きました。このエピソードから、ケリュケイオンは「紛争調停」「平和」「外交」の絶対的なシンボルとなりました。また、ヘルメスが旅人と商人の守護神であることから、一橋大学や多くの商業高校の校章などにも採用されています。
眠りと死のガイド
この杖には人間を眠らせたり、逆に目覚めさせたりする催眠の力があり、死者の魂を安全に冥界へ導く際にも使われました。ヘルメスの「異なる世界(生と死、神と人)の境界を超える」能力を象徴するアイテムです。
医療のシンボルではない?
アスクレピオスの杖との混同
よく救急車や病院のロゴでケリュケイオン(2匹の蛇)が使われているのを見かけますが、本来の医術の神アスクレピオスの杖は「1匹の蛇が巻き付いた(翼のない)杖」です。これは20世紀初頭、米軍の医療部隊がデザインを間違えて採用してしまい、それが世界中に広まったと言われています。 正確には「商売の神様の杖」を病院が掲げていることになるので、少し「儲け主義」のような皮肉な間違いになってしまっていますが、デザインのバランスが良いためか、定着してしまっています。
まとめ
ケリュケイオンは、対立するものを調和させる力の象徴です。たとえ誤用であっても、それが人々を助ける現場で平和の象徴として使われているなら、お調子者のヘルメスも苦笑いして許してくれるかもしれません。