救急車のマークやWHO(世界保健機関)のロゴにある「蛇が巻き付いた杖」。これはアスクレピオスの杖と呼ばれています。彼は神話の登場人物でありながら、現代の医療のシンボルとして生き続けています。しかし、その生涯は「優秀すぎて神に殺される」という理不尽なものでした。
ケンタウロスに学んだ天才
師匠ケイロン
太陽神アポロンの子として生まれた彼は、賢者ケイロン(射手座)に預けられ、医術を学びました。彼の才能は師を凌駕し、やがて不治の病だけでなく、死者すら蘇らせることができるようになりました。
蛇の知恵
ある時、彼が蛇を殺すと、別の蛇が薬草を持ってきて蘇らせるのを見ました。彼はそこもヒントを得て、蘇生薬を完成させたと言われています。彼の杖に蛇がいるのは、蛇が再生(脱皮)と薬学の象徴だからです。
神の怒りと星座
ゼウスの雷
死者が蘇るようになると、冥界の王ハデスが「死者が来なくて困る」とゼウスに苦情を入れました。世界の秩序(生と死の境界)が崩れることを恐れたゼウスは、雷霆を投じてアスクレピオスを殺してしまいます。
へびつかい座
死後、彼の功績を認めたゼウスは彼を天に上げ、「へびつかい座」にしました。一時期13番目の星座として話題になったあれです。
現代作品でのアスクレピオス
Fate/Grand Order
キャスターとして登場。医術のためなら手段を選ばないマッドサイエンティスト気質の医師として描かれます。「患者(人間)は直すべきバグ」というような合理的な思考を持ちますが、その根底には「もう誰も死なせたくない」という切実な願いがあります。
【考察】医療倫理の始祖
ヒポクラテスの誓い
「医学の父」と呼ばれる実在の医師ヒポクラテスは、アスクレピオスの子孫を称していました。医者が誓う「ヒポクラテスの誓い」は、「医神アスクレピオスに誓って…」という言葉で始まります。彼は神話と科学の架け橋となった存在なのです。
まとめ
秩序を壊してでも命を救おうとした神、アスクレピオス。その情熱と杖は、今も世界中の医師たちの手に受け継がれています。