最高神ゼウスですら、彼女の怒りを買うことを恐れたという。世界の始まりから存在する「夜」そのもの、女神ニュクス。多くの神々の母であり、闇の根源である彼女の力は、オリュンポスの神々とは別次元にあります。
ニュクスとはどのような神か?
ギリシャ神話における「夜」の神格化です。カオス(混沌)から生まれた原初の神の一柱で、闇の神エレボスと交わり、あるいは単独で、多くの神々(眠り、死、夢、運命、争いなど)を生み出しました。彼女は冥界のさらに奥底に住み、夜になると地上に現れて世界を闇で覆います。その力は絶対的で、ホメロスの叙事詩でも「神々と人間を屈服させるもの」として描かれています。
神話でのエピソード
ゼウスの恐怖
ある時、ニュクスの息子である眠りの神ヒュプノスがゼウスを眠らせてしまい、激怒したゼウスに追われました。ヒュプノスは母ニュクスのもとへ逃げ込みましたが、ゼウスは「夜の女神を不快にさせること」を恐れ、それ以上追及するのを諦めたといいます。全知全能の王ですら手を出せない、アンタッチャブルな存在、それがニュクスです。
恐るべき子供たち
彼女が生んだ子供たちは、タナトス(死)、ヒュプノス(眠り)、モイライ(運命)、ネメシス(復讐)、エリス(不和)など、人間の力ではどうすることもできない概念ばかりです。彼女はまさに、世界の「理不尽」や「逃れられないもの」の母なのです。
信仰と文化への影響
現代のイメージ
「夜」「闇」「謎めいた美女」の象徴として、多くのファンタジー作品に登場します。ゲーム『Hades』では、主人公を導く母のような存在として、美しくも威厳ある姿で描かれ、人気を博しました。
天文学
冥王星の衛星の一つに「ニュクス」の名が付けられています。
【考察】その本質と象徴
闇の効用
彼女は単なる恐怖の対象ではなく、休息や安らぎを与える「夜」でもあります。光(ゼウス)だけでは世界は成り立たず、闇(ニュクス)があってこそ、万物は眠り、再生することができるのです。
まとめ
光が届かぬ深淵の女王。その漆黒の翼の下で、世界は今日も静かに眠りにつくのです。