春の訪れを告げる火と詩の女神ブリギッド。彼女はあまりにも人々に愛されたため、キリスト教が広まった後も「聖女」として崇拝され続けたという特別な存在です。
ブリギッドとはどのような神か?
ブリギッドはダグザの娘であり、ケルト神話において最も地位の高い女神の一柱です。「高貴な者」を意味するその名は、火(暖炉の火、鍛冶の火、インスピレーションの火)、詩、治療、豊穣を司ります。彼女はアイルランドの国土そのものの守護者とされ、家畜の守り神としても信仰されました。
神話での伝説とエピソード
嘆きの発明
戦いで息子ルアダーンを失った際、彼女は悲しみのあまり叫び声を上げました。これがアイルランドにおける最初の「キーニング(死者を悼む嘆きの歌)」であったと言われています。彼女は喜びだけでなく、悲しみをも芸術(詩歌)へと昇華させた女神です。
聖女ブリギッドへの習合
アイルランドにキリスト教が伝来した際、宣教師たちは彼女への根強い信仰を無視できず、同名の(あるいは彼女をモデルとした)「キルデアの聖ブリギッド」という修道女の伝説を作り上げ、聖人として列聖しました。女神の祝日であるインボルク(2月1日)は、そのまま聖ブリギッドの祝日となり、今も春の始まりを祝う日となっています。
現代作品での登場・影響
ブリギッドの十字架
藁で編んだ独特の形状をした「ブリギッドの十字架」は、火事や悪霊除けのお守りとして、アイルランドの多くの家庭に飾られています。
名前の広がり
英語圏の女性名「ブリジット(Bridget)」は彼女の名前に由来します。時代を超えて多くの女性たちに、その高貴な名が受け継がれています。
【考察】その強さと本質
生活密着型の女神
料理の火、暖炉の火、道具を作る鍛冶の火、そして心を癒やす詩と治療。彼女の司る領域は、日々の暮らしに欠かせないものばかりです。だからこそ、宗教が変わっても忘れられることはなかったのでしょう。
まとめ
凍える冬を溶かし、体と心を温めてくれる女神ブリギッド。その優しさは、今もアイルランドの緑の大地に息づいています。