サルコスクス(Sarcosuchus)は、白亜紀前期のアフリカ(サハラ砂漠、当時は豊かな水辺)に君臨していた、史上最大級のワニ形類です。学名は「肉のワニ」を意味し、通称「スーパー・クロコダイル」とも呼ばれます。全長12メートル、体重8トンというそのサイズは、現代のワニとは比較にならない怪獣レベルであり、恐竜さえも彼らの「餌」の一つに過ぎませんでした。
ティラノサウルス級の巨体
最大個体の全長は約11〜12メートルにも達しました。これはティラノサウルスとほぼ同じ長さであり、体重に至ってはアフリカゾウ2頭分に相当します。彼らは生まれたときは小さなトカゲほどでしたが、50年から60年という長い年月をかけて成長し続け、最終的にこの破格のサイズに到達しました。その背中を覆う装甲板(皮骨板)は、他のどんな捕食者の牙も通さない鉄壁の防御となっていました。
恐竜を襲う悪魔の顎
彼らの主食は魚でしたが、チャンスがあれば水辺に近づく恐竜(オウラノサウルスやニジェールサウルスなど)も積極的に襲いました。水中から爆発的なスピードで飛び出し、約8トンとも言われる強烈な咬合力で獲物に噛み付き、そのまま水中に引きずり込んで窒息死させる「デス・ロール」を行っていたと考えられます。同じ地域には巨大肉食恐竜カルカロドントサウルスもいましたが、水辺においてはサルコスクスこそが絶対王者でした。
電球のような鼻先
口先(吻部)は細長く、ガビアルのように魚を捕まえるのに適していましたが、先端部分が電球のように大きく膨らんでいました。これは「ブラ(bulla)」と呼ばれる空洞で、嗅覚を鋭敏にしたり、あるいは独特な鳴き声を響かせて仲間とコミュニケーション(求愛や威嚇)をとるためのスピーカーのような役割を果たしていたのではないかと推測されています。
まとめ
サルコスクスは、恐が支配する時代にあって、爬虫類(ワニ)が最強の座を譲らなかったことを示す怪物です。水面下に潜むその巨大な影は、白亜紀の生物にとって避けようのない恐怖そのものでした。