イノストランケビア(Inostrancevia)は、ペルム紀後期のロシアに生息していた、当時の陸上最大級の肉食動物です。哺乳類の祖先を含む「単弓類」の中でも特に恐ろしい「ゴルゴノプス類」の最大種であり、その姿は現代のオオカミとクマ、そして爬虫類を混ぜ合わせたような異形の怪物でした。後の時代のサーベルタイガーを彷彿とさせる長大な犬歯を持ち、当時の生態系の頂点に君臨していました。
15センチのサーベル犬歯
イノストランケビアの最大の武器は、上顎から突き出した長さ15センチにも達する巨大な犬歯(剣歯)です。この牙は、当時の大型植物食動物であるスクトサウルスなどの分厚い皮膚や装甲を貫くために進化したと考えられています。顎の力も非常に強く、獲物の喉元に噛み付いて致命傷を与える一撃必殺のハンターでした。また、顎関節の構造により、口を90度近くまで大きく開くことができたと推測されています。
半直立の歩行
彼らの四肢は、トカゲのように体の横に張り出す「爬行」と、哺乳類のように体の下に伸びる「直立歩行」の中間的な特徴を持っていました。普段の移動は爬行だったかもしれませんが、獲物を襲う瞬間には体を持ち上げ、爆発的な加速力で襲いかかった可能性があります。全身は筋肉質で、まさに「殺戮マシーン」のような体つきをしていました。
大絶滅の前の支配者
イノストランケビアはペルム紀の支配者でしたが、その栄華は長くは続きませんでした。ペルム紀末に起きた地球史上最大規模の大量絶滅(P-T境界事変)により、ゴルゴノプス類はすべて姿を消しました。彼らが築き上げた「巨大な牙を持つ肉食獣」というニッチは、遥か後の時代にサーベルタイガー(スミロドン)などの哺乳類によって再び埋められることになります。
まとめ
イノストランケビアは、哺乳類の祖先系統が生み出した最初の「頂点捕食者」の完成形の一つです。その圧倒的な暴力性は、ペルム紀という時代の過酷さを象徴しています。