ギガントフィス(Gigantophis)は、約4000万年前(始新世後期)のエジプト・ファイユーム地方に生息していた、巨大なヘビです。学名はズバリ「巨大なヘビ」を意味します。2009年にさらに巨大なティタノボアが発見されるまで、100年以上にわたって「史上最大のヘビ」のタイトルを保持していました。今のサハラ砂漠からは想像もつきませんが、当時のエジプトはマングローブが生い茂る熱帯の湿地帯であり、そこは巨大爬虫類の楽園でした。
ゾウの祖先を絞め殺す
全長は最大で10メートルを超えたと推定され、これは現存する最大のアナコンダやアミメニシキヘビを大きく上回るサイズです。彼らが獲物にしていたのは、当時同じ場所に生息していた初期のゾウ類「モエリテリウム」でした。豚ほどの大きさしかなかったゾウの祖先を、水辺で待ち伏せし、その太い体で巻き付いて絞め殺し、丸呑みにしていたのです。哺乳類がまだ小さく弱かった時代、この巨大ヘビは地上の支配者の一角を占めていました。
原始的な特徴
ギガントフィスは、現生のボアやニシキヘビに近い仲間ではなく、「マドソイア科」という絶滅した古いグループに属しています。彼らの脊椎骨の形状は原始的で、陸上を素早く移動するのは苦手だったと考えられます。そのため、一生の大半を水の中で過ごし、浮力を利用して巨体を支えていました。目は顔の上の方についており、ワニのように水面から目だけを出して獲物を探すことができました。
バシロサウルスとの関係
当時のエジプト近海(テチス海)には、クジラの祖先であるバシロサウルスも生息していましたが、ギガントフィスは主に内陸の淡水域や汽水域を支配していたため、棲み分けができていたようです。しかし、気候変動によって湿地帯が乾燥し始めると、巨大な体を維持できる環境が失われ、静かに絶滅していきました。
まとめ
ギガントフィスは、アフリカ大陸の歴史に埋もれた「もう一つの王」です。砂漠の砂の下から見つかるその巨大な背骨は、かつてそこが生命溢れるジャングルだったことを証明しています。